「がんばったがダメ。」ライチ☆光クラブ lylycoさんの映画レビュー(感想・評価)
がんばったがダメ。
UNDERGROUND SEARCHLIEの名曲のタイトルであり、この映画に対するぼくの感想でもある。原作マンガは発売当時に買い、一応、昨年末の舞台も観に行った、という程度にはこの作品のファンである。この映画もがんばって楽しもうとしたけれど、残念ながら果たせなかった。
星2つは美術も俳優たちもヴィジュアル的には嫌いじゃない、というぼくのささやかな気持ちだ。それ以外はまったく肌に合わなかった。演出も脚本も、とにかくセンスが合わない。あの古屋兎丸のマンガを原作にして、こうもダサい仕上がりになるものかと、終始苦い笑いがこみ上げてきて仕方がなかった。
そもそも冒頭からイヤな予感しかしなかった。常川少年の厨二病に拍車をかける怪しい辻占が、グロテスクな肉塊のような化物に改変されていた。グランギニョールという言葉から想起されるグロテスクとは程遠い、安直な特撮ホラーにでも出てきそうな造形がまず酷い。のみならず、これを内面に住む化物として描いたことで常川をナチュラルボーン危印にしてしまった罪はあまりに重い。
思春期を迎えんとする少年たちが、不安定な内面を抱えたまま、閉じた世界の中で暴走していく。もう自分たちでは止められない。一路破滅に向かう耽美主義的な虚飾の中から浮かび上がってくる、非実在少年たちの儚さや狂気や哀しみこそが『ライチ☆光クラブ』という作品群の醍醐味だとぼくは思っていた。
けれども、この映画のゼラやジャイボはほとんど感情移入不能な気持ちの悪い悪役でしかない。とっとと痛い目に遭わねぇかな、としか思えない。他の少年たちの描かれ方も酷く一面的で生っぽい。自分たちで創り出した機械、ライチに殺される悲劇が悲劇に見えない。それどころかライチに肩入れさせるような演出になっている。そのせいで凄絶なはずのラストにも、カタルシスが生まれない。
さらに、本筋であるべき少年たちの描写をおろそかにしてまで、無駄にたっぷりと描かれていたのが、カノンとライチの心温まるイチャイチャである。力の入れどころと入れ方が間違っている。美女と野獣というか、マチルダとレオンというか、まあ、ロマンチックでなによりだけれど、迷走しているとしかいいようがない。
こんな題材であえてわかりやすいエンタメを意図したのか、大人の事情で中条あやみの出番を増やさざるを得なかったのか知らないけれど、これではもはやコメディである。ラストシーンのコレジャナイ感は圧巻だ。いままで何を見せられていたのかと唖然とするしかなかった。
原作通りのエピソードをいくらなぞっていても、肝をつかみそこねた演出と脚本でここまで壊れてしまうものなんだなあ。楽しみにしていただけに、非常に残念。