「山のあなた」さようなら(2015) 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
山のあなた
芝居臭いというか、演劇調なのが気恥ずかしい。深田監督自身が劇団所属なんでしょうがないのかもしれんが。「アフリカー、アフリカー」と叫ぶシーンなんて面映くて観てる方が俯いてしまう。ランボー、谷川、牧水と出てくるポエム(笑)がかなりベタなのも恥ずかしいなあ。
「演劇調だから舞台でやれば」とは思わない。監督の『歓待』もそうだったけど、カメラワークや音の使い方が面白くて、映画ならではの作品だったのではないか。
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移民、原発と現代的な設定も入ってはいたが、そういった社会性・時代性よりも、個の「メメント・モリ」な話だったのではないか。「個」だからこその普遍。
「山の彼方(あなた)」には何があるのか、ないのか。その道行き、メメント・モリ。
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私の勝手な解釈だが牧水の「いざ行かん〜」は、男女二人の道行きの歌だと思っていた。
「二人で荒野を歩む勇気はありますか」という愛の告白であり覚悟を問う歌というか。
映画の中で一緒に歩むのは、恋人ではなくアンドロイド。主人公の過去データを全て記憶・記録しているアンドロイドは主人公自身とも言える。
自分の記憶と向き合っての、たった独りの道行き。
それが孤独とか可哀想とかとは思わない。そもそも道行きとはそういうものなのかもしれん。
火に取り込まれて途中脱落する登場人物もいたが、それよりかは、ずっと美しい。ただ朽ちていくだけでも。
追記1:最初に貶すようこと書いたけど、個人的にはけっこう好き。気恥ずかしい映画好きだから。
追記2:イレーネ・ジャコブが途中出てきてビックリした。
追記3:劇中でてくる昔の詩…人の想いや知は、こうやって語り継がれていくんだろうなと。アンドロイドも、想いや知の象徴だなあと。
人間だけが使える「火」によって滅亡していく世界を描い映画だったが、その中で想いや知だけは残るという、しんとした物語だったなあと思う