「一周まわって面白い。原作を読み返したい。」僕だけがいない街 パライソさんの映画レビュー(感想・評価)
一周まわって面白い。原作を読み返したい。
原作と異なるラストをつくったのは良いコンセプトだと思う。
とはいえ、映画オリジナル部分はご都合主義の塊で、とりあえず映画化しておきました!感が凄く、崩壊している。
結果、崩壊具合が逆に面白い。
まず、加代救出後、八代の明確に不可解な点は「児童相談所の連絡をしていなかった」ぐらいのもので、それで犯人と疑うには無理がある。もし、できるとしたら悟は相当なIQの持ち主。
なのに、悟は八代に橋から落とされ、首を切られるけれど、殺人犯を追い詰めにいくのに、何の準備もせず、無防備に突っ込んでいくなんて「バカじゃないの!?」と思わざるをえない。
八代はナイフで切りつける際、手袋もせず感情的にまかせた無計画でずさんな犯行。”狡猾な”八代はどこにいった。。。
もしこんなずさんな犯行をする人間なら、もっと前につかまっているはず。
それにリバイバル解除後、悟が目覚めるまで八代は幼女殺人を繰り返していたわけで、時効を迎えていないんだから、悟は八代を尾行し警察が逮捕できるだけの材料を集めればよかったんじゃないの?
警察に逮捕させてから、刑務所で伝えればよかったんじゃないの?
このストーリーだと、「勇気を持ちすぎて無計画な行動をすると死にますよ」というメッセージになってしまうのでは?
リバイバル解除についても「母親が殺される運命を変える」ことがファクターになっていたけれど、変更した過去の変化点は加代を救出(これだけでは解除されなかった)、八代を犯人だと特定したこと、悟が漫画家として成功し、バイトをしなくても生きていける経済力をもち、愛梨とも出会わなかったという点ぐらい。
逆に悟は、意識が飛んでいる川に落とされてから目が覚めるまでも自動的(?)に行動していたわけで・・何していた???
僕だけがいない街。
この映画を通してタイトルを振り返ると、
この”僕”というものが何をさしているのか不明で、
あえて意味づけするなら、八代に殺された僕だけがいない街ということになる。
そんな悲しいメッセージをつたえるために
こんな大々的な映画を撮影していたのかと思うと驚く。
そんな風に色々な疑問がわく。
そういう意味で面白いし、ひどすぎて原作を読み返したくなる点で優秀作なんじゃないかと思う。