「昭和のBL風味」無伴奏 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
昭和のBL風味
1967年からこのストーリーは始まる。昭和四十年代、反戦運動学園闘争等々、その時代の怒れる若者がストリートを我が物顔で闊歩していた背景。感化された女子高生の主人公も又、その熱く滾った時代の匂いを嗅ぎ取り、能動的に自らをその渦に飛び込んでいく。あるデモと警察との衝突から逃げ込んだ名曲喫茶『無伴奏』。その中で知り合うどこか冷めた感じを帯びる大学生2人とその恋人。そこから思春期の恋愛模様が、あの当時のインテリ的思考をベースに、しかしかなり本能にも寄ったメーターを振り切る行動と思考を多重的に積み重ねていくことになる。
まぁ、ハッキリ言っちゃえば自己顕示欲の強い、破滅型青春物語といった内容である。
とはいえ、その頃生まれた自分とすれば、その20年後に、時代を大きく変換させるバブルが始まるのだから、隔世の感は否めない。
そして、非常にワクワクする未来感を感じさせてくれる毒味の強い時代だったのだろう。会話の受け答えも丁寧な中に知性とアイロニーを含むことを是とし、しかしその行為は激しく、まるで渇いた喉を潤したいと暴れる動物そのものだ。
好きになった恋人は『バイ』だったなんてのは冗談にもならないだろうが、そんな現実があっても不思議ではない匂いがそこにあるのだろう。成海璃子のラブシーンでの不自然なバストトップ隠し(ま、でも正上位だけだけどセックスシーンが多い映画に出たこと自体、よく頑張ったと褒めるべきか)や、池松壮亮の声も含めてのバカリズムとの激オーバーラップ等、突っ込み処も又満載というのも作品に華を添えているところなのだろうかw
テーマの主題音楽であるパッヘルベルのカノンは、あの山達のクリスマスイヴの間奏ア・カぺラで有名だが、まさかそれとこの作品名が繋がってるというオチじゃないだろうなw
斉藤工と池松壮亮の絡みのシーンは我得ではないが、あのシーンにどれだけの世の腐女子がときめいたのか定かではないが、あの時代でタブーとされたことがここに来て再評価され始めてはいるのだということは感じる作品だ。