「私も最初の子を亡くしました」団地 きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
私も最初の子を亡くしました
「私も最初の子を亡くしました」
宇宙人のこの言葉だけだ。
コテコテに騒がしい団地の世界からこの言葉だけが静かに浮いていて、山下夫妻の行動のきっかけになっている。
まったく言葉も思いも通じ合えない団地の住民たちこそ、あれこそが“宇宙人”ではないかと思える始末だ。
直截には描かれていないが
虐待で死んだキタロー少年とか、
息子をバイク事故で失った両親たちの後追いの死の、彼らの霊魂を迎えにきてくれた菩薩のようなものを、あのUFOは寓話で表しているような気がする。
騒がしい住民たちの雑音にかき消されてしまってはいるが、親と子の再会を黙して祈るというテーマに気づけは「異人たちの夏」と主軸は近いだろう。
映画の作りとしては練達しているとはとても思えない残念さはある。
でも、いま喪失感の最中にあって魂の抜けてしまった、心の抜け殻の中にある人たちにとっては、生の実感を失ってさまよう「林の中」、「床下収納」、「押入れ」、「小川」、そして「誰もいない広々とした野原」など・・
これらがどれだけリアリティーのある風景として、そこに展開されているのだろうかと思う。
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長男を間もなくがんで失おうとしている叔父夫婦を見舞った日に。
2022.1.10.
・・
(2025.8.28.誤字訂正)
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