「実に深い映画だなぁと言いたい」団地 レインオさんの映画レビュー(感想・評価)
実に深い映画だなぁと言いたい
笑いながら悲しく感じられる映画。
たまにはおかしいポイントで笑えるってのはすごいよかった。単純なコメディーはあんまり好きじゃないけど、面白いところだけがいい。
団地についてよく分からないが、映画には確かにみんながコメントしたように、小さな社会的な枠組みでもあって社会のいろんな現象も団地にそのまま映される。
この映画がとくに取り込んだのは、噂ってことだが、中にも根掘り葉掘りできる深いところもいっぱいあると個人的に解釈したい。
これは団体vs個人の物語だ。。山下夫婦は明らかに人に嫌われるタイプではないが、最初自治会のことに興味満々の山下清治は自分の落選をきっかけに団地から消えると決心したことをきっかけに、ヒナ子と夫婦二人は完全に団地の人のところから離れる。ヒナ子はみんなの前に出たりするが、噂が流れる時点からでもその話に参加しないし、弁解もしない。生活的にもぢんりれきにもその団地から離れる。その証拠に清治も「私はあなたと漢方薬だけがいとると十分」と言った。
そのあと、夫婦二人は団地から脱離する一方、さらに死んだ息子のこと、マスコミに追われることしか考えない。それもこの後のことと繋がっている。今度団地の人が噂を流し大騒ぎになっても全く気にしないひな子二人は、真城の話を聞いて息子に会うために漢方薬を一筋に作る。
この時点でもう二人は団地と全く違う世界で生きている。真城の言ったことは理解不能でも、団地後ろの林のように、聞くと二人は落ち着ける。
真城の言った「人間こそ神秘的」という思想は、ずっとマスコミや噂に悪影響される清治とひな子にとっては救い草みたいもの。彼の言葉を信じること=いまの暮らしを放棄し彼の世界に参加すること。つまり二人は「現実世界」=「不合理ばかりある虚構の世界」(真城によると)が嫌になって、新たな団体に属することもできた。新たな世界を選んだ。
しかもその世界は一番団地との衝突は宇宙船みたいなものの出現のところで現れる。
未練もない二人は宇宙船の中に君子夫婦と対話した。別れのようにこれから息子に会って苦痛のない世界で生きるってことかなぁ。。
最後にはよくわからないが、息子も帰ってきたようだ。まさかのSF!
特にこの映画の雰囲気が好きだった。笑いもあり、なんとなく落ち着ける。また未練のなさそうな夫婦二人を見て悲しい気分にもなる。
一方、時間的には完全にロジック的ではなく、期間ごとに示されて先に見せることもあってあとで解釈する形も気にいる!示すことの順番を変えることで疑問を残したり、時にはなるほどと見る人に思わせたりしてよかった。脚本に工夫したということだ。
最後SFになるとは思わなかったので、逆によかった。
映画のテーマとして、私たちの「現実世界」には辻褄の合わないこと、ロジックに従わないこと、不合理なことがいっぱいある。息子の死で未練もなく社会に対して団地に対して愛想もない夫婦二人には特にそうだ。
だから地球人じゃない「人」にも不自然なく完全に頼れるに決まっている。