「悲しみを燃料に(でも廃棄)」団地 エイブルさんの映画レビュー(感想・評価)
悲しみを燃料に(でも廃棄)
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図らずも団地映画を連続で観てしまったが、耽美的に描かないこちらにグンバイが上がった。
人の生活には悲しみが根底に流れている、だからこそ、美しい。そう断言されても全然ピンとこない。ピンと来るために物語が作用する場合があるようで、この場合が本作にあたる。あとは見せ方だが、理解を先回りするセリフと感情表現の抑えられた演出によって下品なわざとらしさがなく、考える余地のたのしみにハメられ、ハマっていった。あっけらかんと清々しいくらいのむなしさをみて、こちらは涙した。途中からは藤山直美が掃除機かける仕草すら感動的だった。だが序盤からいやな予感はあった。もしかしてエヴァンゲリオン展開か?と。
そうして、やはり中盤から狂った。狂うのはいいのかもしれない。が、全員が狂って見えてしまったのでシラけた。全然別のストーリーを形成してしまった。エヴァというか、松本人志の「大日本人」みたいな感じになっていた。悲しみを燃料に力技、何をしても良いとしても、やはり想像力というものはつまらないもので、歪んだ事実をコツコツと積み上げていくしかない。歪み具合は、中盤まで完璧だった。せっかく積み上げたものを一気に無かったことにするその勿体無さが、笑える、という話に堕した。
団地=UFOというのも分からなくもないが、説得力が欲しかった。団地の映し方にフィクション風が、(今思えば散見されるものの)もっと印象づけてあればまだ狂わなかったのかもしれない。
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