バジュランギおじさんと、小さな迷子のレビュー・感想・評価
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複雑な背景にシンプルな物語
インドとパキスタン国境のあるカシミール地方では、最近も大きな攻撃があった。ここは国際社会の中でも極めて緊張感の高い紛争地域の一つで、両国の溝は我々が思うよりもずっと深いのだろう。
この映画は、難しいことは少しも描かない。バジュランギおじさんはひたすらに純粋で、少女を家に送り届けることだけを目的にする。出てくる登場人物もいい人が多い。ラストは現実社会に対して楽観的すぎるという意見だってあるだろう。けれども、この両国の融和を信じる気持ちがあるのだということもまたきっと事実なのだと思う。これがフィクションに過ぎないとしても、そのフィクションを信じる気持ちが世の中を本当に変えるかもしれない。
少なくともこの映画がインドで大ヒットしたという事実はある。本当はみんな争いたくないと思っているということじゃないだろうか。
両国の複雑な事情が背景にあるからこそ、このシンプルな物語が響く。とても力強い映画だった。
インド映画に求めるものの至高
派手で大袈裟でけたたましい歌、派手で大袈裟でけたたましいダンス、ストップモーション、スローモーション、突如として吹く風、何かが舞う、派手で大袈裟でけたたましい効果音、つまり派手で大袈裟でけたたましい演出、いきなり挟まるロマンス、コメディ、矮小な悪党、やたらイイ人、歌の上手いオッサン、美女。加えて色彩が綺麗。
一人のインド映画好きとしてインド映画に求めるもの全てが詰まった、ダイナミックでパワフルな、一言でいえば「最高」だ。
初めて観たインド映画は「ロボット」か「ムトゥ踊るマハラジャ」か忘れてしまったけれど、突然歌う、突然踊る、やけに長い、そして、派手で大袈裟でけたたましい、ある意味でバカバカしい作風に笑ったり戸惑ったりしたものだが(今でも笑いはするけどね)気がつけば、そのバカバカしさの虜となり、より派手で大袈裟でけたたましいインド映画を探す日々。
久々に「コレだ」と言える作品で私は感動すらおぼえるのだが、逆にいえばインド映画の魅力にまだハマっていない方には、ちとキツいかもしれないね。
本作を観てインド映画が好きになってくれたら嬉しい。インド映画を観る分母が増えれば観られる作品の数も多くなるからね。
徐々に薄れてきているとはいえ、インドではまだ階級社会だ。そしてパキスタンとは敵対していると言えるほど。
そんな中を、ハヌマーン神を敬愛するバラモンのインド人で、底抜けに正直でお人好しの主人公パワンが小さな迷子シャーヒダーと出会う。
彼女を無事に家族の元へ帰すために、階級の壁を越え、宗教の壁を越え、ついには国境をも越える。
自分の宗教に厳格で異教徒だからと線を引くパワンに対してイスラム教側が寛大なのが面白い。
その寛大さがパワンに変化をもたらし、彼の正直さと相まって、階級、宗教、国を越え人の心を掴むが、最初に心を掴まれたのはパワンなのだろうか回りの人々なのだろうか、不思議な愛のスパイラルを生み出す。
それは最終的に観ている私たちまで巻き込んだ大渦となるのだから、約束されたベタなエンディングだとしても感動できないわけがない。
パワンは愛と正直さで壁を越えていくわけだが、そもそも壁なんてものは人の心が生み出した「ありもしないもの」なのかもしれない。シャーヒダーの純粋さがそれを教えてくれた。
インド映画ファンには必見、まだインド映画ファンではない人にはオススメの一本。本当にイイです。
おいおいと泣いた
心に残る傑作。迷子が可愛すぎる。
日本で2018年の公開時に観てなくて、今年再上映でようやく観た。
この映画は「全世界級の傑作」だと思う。
ストーリーはシンプルで、困難や障害を色々な幸運と人の助けで乗り越え、ラストに最高の感動でハッピーエンドになるという、超王道。安心して観ていられる。
そして、インド娯楽映画のお決まりのダンスシーンもふんだんに。でも「どこかで観たことあるような映画」ではない。
宗教の違いとそれに起因する隣国間の対立が全編にわたって描かれている。単なる娯楽映画ではない。
しかし、宗教や国家という厚い壁を吹き飛ばすような力「真心」を発揮する主人公バジュランギ(サルマン・カーン)とそれに感化される周りの人々。そして、アクション、笑い、スリル、涙、移りゆく自然風景、ヒンドゥーとイスラムの音楽・衣装・・・様々なスパイスで絶妙なバランスの味付けがされている。160分という長さを感じさせない。一切くどいところがない。
アクション、ダンスからシリアス、コメディまで何でもござれのサルマン・カーンの演技力には圧倒される。
しかし!声を大にして言いたい。最優秀主演女優賞はシャヒーダー役のハルシャーリー・マルホートラ!
言葉を発しないこの子の演技といったら・・・
・手を頭にあてて「アチャー」
・馬鹿正直に話そうとするバジュランギを必死で止めようとして服を引っ張り首振り
・「そのとおり」の意味で手のひらを上げるポーズ
・ハヌマーン神(猿)を見つけてバジュランギと一緒に手を合わせてお祈り
どれも可愛い!可愛すぎる。世界中の観客が心を鷲づかみにされたんじゃないだろうか?
王道ストーリーにシリアスな社会問題あり、ダンスあり、アクションあり、笑いあり、涙あり、感動あり。確かな演技の役者陣と最高の子役。
ラストシーンは、涙が止まらなかった。周りの人に顔をみられないように、落ち着くまで待って席を立った。
「いい映画観たなあ。また観たいなあ。」と素直に思わせてくれる最高の映画だった。
宗教は違っても、人の良心、真心は通じる!
<余談>
大人2人が並んで川で水を飲むシーン。バジュランギはシャヒーダーに何を確かめていたのか?この映画にドはまりした人にヒントを教えて貰って、爆笑。
(2024年映画館鑑賞22作目)
<追記>
今回の再上映は、日本での上映権が短期間限定で復活して実現したそうだ。次にまたいつ劇場で観られるか、わからない。もう観られないかもしれない。
DVD/BDも、絶版になっているらしく中古品が高値で出回っている。また観たい、手元に置いておきたいと思って探し回り、運良く比較的良心的な価格で新品同様の中古品を購入できた(解説ブックレット入り)。
夜、一人で観た。
またシャヒーダーの可愛さに顔がほころび、笑い、今度は人目を気にせず泣いた。
そして、これまで何度も観て何度も泣き、大切に保存している「ニュー・シネマ・パラダイス」や「この世界の片隅に」と同じような涙を流していることに気がついた。
生涯ベストに残る作品になった。
※2024/9/7一部修正・追記。
号泣
陽気なだけでなく歴史も深き。
根は馬鹿正直で信仰深き力持ちなインド人男性と口がきけないパキスタン人少女との2国間を跨ぐ長き旅路に突っ込みどころ多くも後半の歌と善意の展開に涙腺緩みまくる。途中から同行した記者のナイスアシストが見事で今作品でもネット配信は強かった。
迷子といえばこの作品を思い出したね『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』インドの密過ぎる人口は絶望的よね。。
今こそ観る価値あり
二人の関係性と二国間の政治性
序盤では、「バジュランギおじさん」がなかなか出てこず、回想場面に移るとシャヒーダーが出てこなくなって、しばらく様子がわからなくなっていた。シャヒーダーが鉄道で迷子になってしまい、戻っていくという展開は、"LION"にも似ている。山への経路は、『ブータン 山の教室』にも似ている。
シャヒーダーの正体が少しずつわかっていく過程で、インド人のパキスタンに対する感情がわかる一方で、"VIVANT"のように砂漠を放浪して抜け穴を通って国境を越え、パワンがパキスタン人たちからスパイ扱いされるのがなかなか抜けきれないところに、互いの国の対立の根深さが窺える。『ガンジー』や『英国総督最後の家』にも通じることであろう。誤解が解けていって良かった。
パワンとシャヒダーとは、宗教だけでなく、行動選択の方向がしばしば反対向きになっていて、それがまた物語の展開に面白さを混ぜ込むようだ。
踊りの場面もあり、ラスィカー役のカリーナ・カプール氏は、『きっと、うまくいく』でみおぼえがあった。
お隣事情
宗教の違い、憎しみを超えて善意の輪が広がる
エンターテイメント王道とはコレのこと。
ハヌマーン様のおかげ
泣いた。
24-046
パキスタンからインドに、母と二人で旅行した女子。不注意で列車に乗り...
パキスタンからインドに、母と二人で旅行した女子。不注意で列車に乗り損ね、インドに置き去りに。
声が出せない女子、インド人に名前も出身も説明できないながらも、ある青年に懐いて。
生真面目な青年、じゃあこの子の郷里がどこだか探って、連れて帰ろう…というお話。
食事も信仰も別だと、徐々に判明したり。
迷子の最中でありながら、女子は周囲に好奇心旺盛だったり、笑顔は屈託なかったり。
しまいには、パスポートもビザも無く、こっそり二人で国境を越えて。
それが原因で、騒動が起きたり、味方をする人もいたり。
お役人は、彼らを捕まえようとするものの、
通りがかりの記者が、事情に気が付いて、全力で応援してくれたり。
険悪な隣国間ですが、登場人物たちが純朴でまっすぐで、とても可愛らしいお話でした。
公僕に賄賂を要求されることは、私的にもかつてインド渡航中に経験ありましたが、まだそうなんですね。
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