「泣けるロードムービーで終わらない素晴らしさ!」バジュランギおじさんと、小さな迷子 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
泣けるロードムービーで終わらない素晴らしさ!
インドらしい緻密で泣かす映画だと期待はしていたけど、過去最大級の嗚咽作だとは思わなんだ。これ以上は無い愛くるしさの女の子をダシにしたロードムービーは、インドらしい楽しさに溢れる、本当に素晴らしい映画でした。オチには感銘した!
印パの分離独立が間違いだとは思わない。やり方が杜撰で性急だったけど。結局は「宗教」で色を塗り分けた分離政策は「それしか無かったから」。今思う。本当に、異教だけを理由に誰かを憎めますか?殺さなければならない理由になりますか?
物語りの途中、あちこちに異教に対する拒否反応、逆に、拘りの無い姿が描かれています。国境開放に集まって来たパキスタン人に、パシュランギはアラーを称える返礼をします。シャヒーダーはインドに向かってハマヌーン神に礼をする。
宗教を認め合うこと。愛すること。皆んな出来るでしょ?って言う映画は、無論、印パの間だけの話ではなく。
シャヒーダーが声を出すタイミングも言葉も、予想は出来るんです。分かっちゃいたけど、怒涛の落涙。前日見たアリータは、流れ落ちた涙を文字通り断ち切りました。俺は戦士じゃ無いので、遠慮無くボロ泣きさせて頂きました!
今年の一番候補です。
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2/25追記
宗教問題の根本的な解決など出来ない。一つの宗教に統一することも、全てを消し去ることも不可能だから。しかし、それを理由にいがみ合い、殺し合う必要もない。「悪いヤツ」は自らの欲を「別の何か」で隠蔽する。石油利権を維持したい人達は、経済的欲望を宗教問題に粉飾している。政治的な陰謀を、別の誰かに対する憎悪で隠蔽している国もある。印パの分離時、「宗教問題」で覆い隠されたのは、「国力を削いだ上で対立させれば宗主国への憎悪が薄らぐ」と言う、大英帝国の卑劣さ(個人的な解釈です)。
宗教を理由に憎しみ合うことを止めれば、本当に悪いのは誰か、解決しなければならない政治・経済の問題は何なのかが、表に出てくるのに。
インド側が作った映画でしたが、劇中ではムスリムへの尊敬を描くエピソードがあります。アラーは誰も拒まない。だから鍵は掛けない。師とあがめたくなってしまう。「印度人、ウソつかなーい」もパシュランギが徹底して見せてくれる。最後には、仲間にウソをつかせたけど。
正直になること。相手に対する敬意。そんでもって「愛」。このメッセージの見せ方が、とてつもなく素晴らしい映画だった。何度でも言いたい。絶対見るべきです。って、もう遅いか。
朝からパシュランギ、午後一本目がバグダッド・スキャンダルと言うハシゴは偶々だったんですが、続けて観たら、そんな事を思ってしまいました。