「インド流の社会派+エンタテインメント映画」バジュランギおじさんと、小さな迷子 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
インド流の社会派+エンタテインメント映画
パキスタンの山岳部の小さな村に暮らす女の子シャヒーダー(ハルシャーリー・マルホートラ)。
5歳ぐらいなのだが、まだ口がきけない。
村の長老の勧めで母親に連れられ、国境近くのインドのイスラム寺院にお参りに行くが、帰りの列車が途中停まっているときに降りてしまい、そのまま取り残されてしまう。
次に来た列車に乗り込んだが、その列車の行き先は全く別。
シャヒーダーは異国の地インドで迷子になってしまう・・・
というところから始まる物語で、迷子になった先では、いままさに猿神ハヌマーンのお祭りの真っ最中で、そこで陽気に歌い踊るインドの青年でパワン(サルマーン・カーン)だった・・・と展開する。
巻頭すぐのハマヌーンのお祭りのミュージカルシーンでいっぺんに惹き込まれます。
というか、ここで惹き込まれないひとは、インド映画との相性はすこぶる悪いでしょう。
とにかく、群舞群舞群舞のゴージャス感。
敬虔なヒンドゥー教信者で純朴真面目なパワンは、シャヒーダーを放っておくことが出来ず、最終的に居候先まで連れて帰ることになります。
で、口が利けないものだからシャヒーダーをバラモン階級の女の子と誤解しての、いわゆる、思い込み&勘違いのお笑いが前半。
シャヒーダーがパキスタン人だとわかって、送り返そうとするが、悪人によって人身売買されそうになったので、それならば自分が送り届ける、と決意したパワンとシャヒーダーの旅が後半です。
全体的に、インド流のエンタテインメント手法でみせるのですが、前半が少々くどい感じがします。
後半は、パキスタン側にインド人スパイと誤解されたふたりを追うパキスタン人カメラマンが加わっての道中となり、バディムービー風となります。
このカメラマンがなかなかいい味を出しています。
シャヒーダーは、無事、母親のもとへ戻ることが出来るのですが、その後も1エピソードあり、最後までハラハラさせられました(とはいえ、エンタテインメントなので、結果はわかっているのだけれど)。
社会派の内容をエンタテインメントで魅せる映画としては上出来。
インドとパキスタンの国家の対立の根っこには、ヒンドゥーとイスラムの宗教対立があるわけですが、敬虔なヒンドゥー教信者のパワンが最後の最後にパキスタンの人々にイスラム教のお礼の仕草をして感謝の気持ちを表すシーン、ジーンと来ました。