劇場公開日 2015年12月12日

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「こんなにダメでもみんな生きてるんだ」ハッピーアワー Tama walkerさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0こんなにダメでもみんな生きてるんだ

2024年11月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

5時間を超えるのに、眠くなることが全然なかった。例の濱口映画特有の「棒読み」は、慣れてはきても時々やはり違和感を感じる。普通にドラマに没入しかけたところで「あなたはいま濱口映画を見ているんですよ」と注意喚起されるかのようだ。

眠くはならなかったが、見ているのが苦痛というか、こういう人/場はものすっごく苦手なので自分だったら一分一秒も早く逃げる、と思ったシーンがいくつかあった。エロでもグロでも不正でもないのにそこまで忌避感を抱かせるのはすごい。濱口竜介の映画をみると、そういう自分でも気づいていなかった自分の志向のようなものがあらわになって、ひそかに狼狽させられることが多い気がする。
実はこの「自分でも気づいていなかった自分の志向に狼狽する」というのが、この映画の主題である。それによって人生変わったり大ショック受けたり別人のようになっていったりするのが、37歳の4人の女性親友グループと、その夫など周囲の人々。
37歳というのが微妙な年齢。濱口監督自身、当時それに近い年齢だったようだが、「こうやって生きていくしかない」と思い込んでいながら、「押し殺していた自分を発見して人生が変わる」ほどに若い、逆にいえばまだやり直しがきく年齢だ。決してハッピーではないが、それぞれ何かが変わった、動き出した、というところで映画は終わる。

「普通の」「ちゃんとした」としか言いようのない、働いて(主婦も含)普通に生活して法律まもって税金はらって、ごくまっとうに生きている人々。なんだけど、大切な相手からみれば、あるいは自分でふと気がついてみれば、どうしようもなくひどい人間であったりする。
見て元気が出る映画ではないんだが、逆に「こんなにダメでもみんな生きてるんだ」「人生ってこういうものだよね」と苦笑させられ、ちょっとだけ気が楽になった。

Tama walker