劇場公開日 2015年10月10日

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「沖縄、八重山に重なるスコットランドの大自然」海賊じいちゃんの贈りもの cmaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0沖縄、八重山に重なるスコットランドの大自然

2016年1月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

この映画の主役は、芸達者な子どもたちでも、おおらかな海賊じいちゃんでも、騒々しいオトナたちでもない。山と海が一体になった、どこまでも広がりゆくスコットランドの大自然だと思う。またしても、一見地味ながらじわじわと心に響く、イギリス映画の底力を見せつけられ、うれしくなった。
特段の前情報を入れずに観たこともあり、先の読めない展開に唖然。「えええ?!」と思いながらも、ぐいぐいと物語に引き込まれた。ロードムービーと思いきや、小さなトラブルを重ねた後に、割にあっさり目的地に到着。邦題から連想するとキーパーソンらしき「じいちゃん」も、意外に活躍しない。(いつもながら、イギリス映画の邦題は、どうしてこんなにゴテゴテしているんだろう? 原題から程遠い…。)とは言え、とにかく三者三様で、マイペースな子どもたちが面白い。のっけからテンポよくオトナたちを振り回し、思いがけない冒険に突き進む。そして、騒動は際限ない窮地へ!
柱を失ったオトナたちと子どもたちの行く先は… 。迷走に迷走を重ねた末に、いつしか物語はフワリと帰着する。それは、少しだけ成長した子どもとオトナが、最後の最後に自力で掴んだもの。それを支えたのは、「じいちゃん」の存在と、彼らを抱くスコットランドの大自然だ。どこまでも広がる海と緑には、世知辛いあれこれから解き放たれ、ふっと我に帰る力がある。そして、触れると不思議に引き込まれる、砂の魅力も忘れ難い。形づくろうとするとサラサラ崩れるのに、手にはまとわりつく、あのざらつきと心地よさ。思いきり走ろうとすると、足が重たくめり込んでしまうもどかしさ…。末っ子の砂山づくり、じいちゃんを砂に埋める遊び、砂浜を必死に駆ける彼らの姿などから、幼い頃から今までの自分の「砂」体験や記憶がじわじわと沸き起こり、何だか、彼らがとても近しい存在に思えた。
それにしても、この景色、何処かで見たことが…と頭をめぐらし、ハッとした。気候は違うのだろうが、高台から見た沖縄、八重山の景色にとても似ている…!是非とも、魅力的な人と自然に溢れる沖縄で、本作をリメイクしてほしい。もちろん、最後はカチャーシー付きで!

cma