劇場公開日 2016年9月1日

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「持てるものと持たざるもの。」セルフレス 覚醒した記憶 レントさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5持てるものと持たざるもの。

2023年5月14日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

単純

寝られる

建築家として巨万の富を得た主人公ダミアンだが、いまや病で余命半年の身。そんな彼が友人の勧めでクローンの肉体に記憶を移植するという手術を受け、新たな人生を謳歌することに.。
しかし、その肉体はクローンではなく金と引き換えに献体されたマークという青年のものだった。それを知ったダミアンはマークの家族を守るために組織と戦うことに.。

命をも金で買えるダミアン、かたや娘の治療費のために自分の命を売らざるを得ないマーク、まさに持てる者に持たざる者が搾取されるという社会の構図がここでも見られる。

ダミアンはトランプばりの金ぴかのペントハウスに住むいけ好かない金持ちだ。そんな彼が改心して貧しいもののために戦うという話かと思ったけど、はなから金持ちという以外そんなに嫌な奴でもないみたいで、いきなり襲ってきた敵からマークの妻子を守ろうと必死で戦う。
また、他人を犠牲にしてでも生きながらえるか、あるいは自分は身を引くか、そういった究極の選択に悩む描写は一切なく、ただ後半は逃走劇と組織への反撃という流れに終始する。主人公の心の変容を描けるほど脚本家には力量がなかったようだ。

ただ、自分の娘とは出来なかった子供とのふれあいができたことで最後の決断につながったんだとはわかるけど、これも誰もが予想できるラスト。

クローンに記憶の移植をして永遠の命を手に入れるというのはシュワちゃんの「シックスデイ」で既にやってる。本作はクローン技術が追い付かないから強引に生きた人間を利用したもんだから、当然非合法となり武装した私設警備員まで雇って証拠隠滅行為まで行うというのが敵役なんだけど、正直、敵のスケールが小さ過ぎて、またSF作品としても話はあまり広がらない。
本作を見て「シックスデイ」がいかに傑作だったかを再認識した。世間の評価は低いけど。

「ザ・セル」のターセム監督の名前につられての鑑賞だったが、内容があまりにも凡庸だし、映像にも監督らしさはない。やりたくてやった仕事ではないのだろう。

レント