「「伝説誕生」でもあり、「伝説再誕」でもある英雄譚。」バーフバリ 伝説誕生 すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
「伝説誕生」でもあり、「伝説再誕」でもある英雄譚。
〇作品全体
作中での伝説的エピソード群も強烈だったが、構成の巧みさに惹かれた。
最初はシヴドゥの立志伝として見ていた。隠された出自、優れた力、そして数々の逸話。どれも魅力的とは感じたもののシヴドゥ個人の異端さを個々の特徴だけで形作るのみで、それぞれの設定が結びついていないように感じた。例えるならウィキペディアの偉人ページで逸話やエピソードだけをつまみ食いするような、そんな感覚。
しかし、マヒシュマティ王国民がシヴドゥを見てポツリとつぶやく「バーフバリ…」というキーワードが出たあたりから、シヴドゥが作り出す逸話やエピソードの裏に、何者かの影があることが見えてくる。この薄くもやがかかった感じのバックボーンの見せ方がすごく良かった。
作中後半で明らかになる父・バーフバリとその伝説。シヴドゥの持つ力とその存在を更に強化する。じっくりと描かれたバーフバリ伝説は時間を使えば使うほどシヴドゥの物語にもなるのが面白い。
ただの落延び王族孤児から伝説を引き継ぐ英雄に変わっていくさまをバーフバリ伝説を後半で見せることでより偉大な物語に見せる。単純な伝説の誕生ではなく、バーフバリの再誕としての意味付けもあり、シヴドゥという登場人物をより魅力的に演出していた。一言で言ってしまえば「壮大」という言葉なのだろうが、その「壮大」を作り出す構成に痺れた。
ラストのカッタッパのセリフも次回作への期待を募らせる。今度はどんな「壮大」がみられるのだろうか。
〇カメラワークとか
・クイックパンで驚きの表情を見せるカットが印象的。インド映画に限らずあるんだけど、役者の演技が濃いのもあってインド映画は特に印象に残る。インド映画のミュージカルシーンも短いカット割りでテンポよく表情抜くカットがあるけど、これって日本でいう「見栄きりカット」だよなあ。日本だと能、歌舞伎の文化が後ろにあるからこういうカットが作られるけど、インド映画の場合なんだろう…ヨガとかか?どっちにも「静の時間がある」っていう共通点がある。インド映画のはダンスがすごい激しいから、それがいいアクセントになってる理由でもある。