「原作に忠実な場面は面白いのに」俳優 亀岡拓次 島田庵さんの映画レビュー(感想・評価)
原作に忠実な場面は面白いのに
べつに原作原理主義者ではないが、
映画化に当たって監督・脚本が余計なもの
――余計な場面や余計な意味づけ
を加えると、たいがい原作の良さは破壊される
と思う。
原作小説は、
芥川賞候補に5回もなって毎度落選を強いられている(川端康成賞はとった)戌井昭人さんの、
飄々としてシュールな文体で、
ちょっと情けなくてちょっとカッコよくてシャイな
脇役専門俳優・亀岡拓次を描いた
笑えるハードボイルド(?)連作短編集。
原作を忠実に描いている場面は、
ことごとく面白く、可笑しい。
余計なものを加えたところは、
見事にことごとく詰まらない。
たとえば、舞台の場面。
亀岡拓次は大学を出たての頃、
劇団の養成所で演技を学んだ。
舞台に出たエピソードはその頃つまり15年は前のもので、
その後は映画専門。
その時間軸を狂わせたら、全てが台無し。
それから、スペインの世界的監督からオーディションに呼ばれた場面。
その監督がなぜか亀岡の演技が大好きで、
結局オーディションもなくて決まってしまうのが面白いのに、
映画ではオーディションとして余計なつまらん芝居をさせてブチコワシ。
その他にもいろいろと。
カワサキGPZ900Rをカブにしちゃったりとか。
横浜聡子という監督は、
余計なことをして、原作を台無しにしたと言わざるを得ない。
いい場面もいっぱいあるんだけどね。
残念至極。
コメントする