劇場公開日 2016年2月5日

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「「宙わたる教室」からたどり着いた「火星の人」」オデッセイ sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「宙わたる教室」からたどり着いた「火星の人」

2024年12月1日
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鑑賞方法:VOD

NHK総合、毎週火曜日放送のドラマ10で「宙わたる教室」というドラマが放映されている。都内の定時制高校の科学部の話なのだが、彼らは、火星の状況を校内で再現して、クレーターを生成する実験に取り組み、学会での発表を目指している。
その実験のきっかけとなったのが、保健室登校をしていた佳純と顧問教師藤竹の、小説「火星の人」にまつわる会話からだった。
このドラマ、とにかく火星あるあるが色々出てくる。火星の夕焼けは青いこととか、火星探査機のオポチュニティのエピソードだとか、昼と夜の寒暖差が100度近くあることとか…。そして、「オデッセイ」が「火星の人」の映画化なんだということを知り、これは観たいなと思って鑑賞した。

ドラマの中でも「映画では夕焼けが青くない」と言っていた通り、伝わり易いように配慮してか、そういったファクトの部分はさらっと地球上に寄せられていたが、内容としてはとてもいい映画だった。
取り残されたマークが、死を覚悟しつつも生きることを諦めずに、自分のこれまでのありとあらゆる知見を活用して活路を見出していく姿。地球とコンタクトが取れない中で、NASAとマークが互いにコミュニケーションの方法を探り合って、課題をクリアしていく姿。不可能にみえるミッションも、誰かしらの新たな発想を持ち込んで乗り越える姿。そして、たった一人の命を、国を超えて皆で救おうとしていく姿。それらの姿が胸を打つ。
火星に一人残されたマークと重ねるのもおこがましいが、自分も今年3ヶ月間の入院をして、周囲の人達には覚悟をさせてしまう状況もあった。映画でも、悲壮感漂うNASAの人々に対して、当のマークはどこかあっけらかんとしていたが、自分はそこにとても共感できた。
マークとて、自分の死を考えない訳ではなかったろうが、ずっと悲嘆に暮れているのは、ちょっと違うと思うのだ。今とにかく生きていて、やれることがある状況なのだから、いつも通りに、これまで一人の時間を過ごして来た時と同じような生活を送ることは、とても自然なことだと思う。だから、ログの動画撮影の場面は、笑いながら楽しく観られたし、クルーたちとの軽口の言い合いは、そうした覚悟を共有するもの同士の絆が感じられた。そして、いよいよ火星を脱出できる時の万感の涙には、自分も退院の時を思い出した。

起承転結のストーリーは明快。展開も王道だが、それでもやっぱり、よいものはよい。

今日もいい映画を観られたことに感謝。

sow_miya
みかずきさんのコメント
2024年12月1日

共感ありがとうございます

どんな状況になっても意志の力を絶やさず乗り切っていく主人公の姿を淡々と描いた秀作でした。劇的にすることは可能な設定でしたが、
主人公の自然体の姿を描くことでリアル感が増し、ラストは感動的でした。

では、また共感作で

ー以上ー

みかずき