劇場公開日 2016年2月5日

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「絶対に諦めない。ワトニーならそうする。」オデッセイ ねこばばさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5絶対に諦めない。ワトニーならそうする。

2024年4月29日
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鑑賞方法:映画館、VOD

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公開当時に劇場に行き、最近サブスクでも公開されたので改めて鑑賞。やはり素晴らしい作品だ。「火星でジャガイモを育てる映画」というユニークなシーンが独り歩きしている感があるが、この作品の本質はそこではない。

本作の原作は小説だが、その成り立ちはかなり独特だと聞く。というのも、小説本文を全てインターネットに無料公開し、読者からの指摘を受け付け、内容をレビューした上で本文に取り込んで修正していくという、テック業界でいうところのOSS (オープンソースソフトウェア) に近い形態が取られたとのことだ。こうして「開発」されたシナリオは集合知を武器として圧倒的なリアリティと説得力を備えている。

未来の宇宙開発を舞台にしているにもかかわらず、まるで記録映像を見ているかのような現実感は、この映画最大の魅力だろう。そして「火星に1人置き去り」という果てしなく困難な問題に対して、主人公ワトニーは地道に、泥臭く、しかしあくまでもポジティブに立ち向かっていく。現実とはスーパーマンがひとっ飛びで助けに来てくれるなんてことはなく、チームで協力して限られた資源の中で解決させるしかないのだ。(外部の協力者は現れるが、それだって無敵の解決策ではない)

彼の姿を見て「絶望感が足りない」と言う人はいったい何を求めているのか。目の前の課題を解決してゴールに近づくことを諦めない、科学者としての理想がこの映画にはある。「余裕がありすぎる」という意見は… まあ分からんでもない。あとはまあ、派手なアクションシーンはないので、渋い映画ではある。

それでも、もう一度見たいと思っていて、そして見るたびに励まされる映画だと改めて実感。ワトニーの生きざまは人生の手本にしたいぐらいだ。

ねこばば