「I will survive」オデッセイ ipxqiさんの映画レビュー(感想・評価)
I will survive
公開時に観て以降、だいぶ経ってからたまたまCSで再会。
途中から何気なく見始めたのに、気がつくとかぶりつきで最後まで観てしまうのはいい映画の証拠。
たぶん原作の内容をかなり圧縮してプロジェクトX的にまとめたんだろうけど、2時間程度の映画にするにはいい方法だったと思う。
探査中の火星に人が取り残される、という近未来SFなのに、それをアポロ13号(も、映画になってるけど)など実際の事件のドキュメントのように描くことで、自然とこちらも画面に引き込まれてしまう。
話はもうこれ以上ないくらにシンプルな「生きて帰る」。
よく映画のストーリーはシンプルな方がいいと言われるけど、これはまさにその極みともいえる。
そのストレートなあらすじを、地を這うようにひとつひとつの行程を見せることによって映画が成立している。そして絶妙にリアルなディティールがそれを支えている。
まあSF映画のディティール描写においてリドリー・スコットに抜かりはないでしょうが。
終盤のマット・デイモンの痩せ方もリアルなら、ビタミン不足?であちこち皮膚炎になってたりとか、歯が汚いとかのメイクの細かさも、再見してようやく気づけた。
猛スピードで話が進んでいく中でも、ちょっとしたことで人物の心情を感じさせる演出が心に残った。
たとえばかなり無謀なミッションに挑む直前、マット・デイモンが鏡に映る自分を見て、黙って髭や髪を剃る。それだけでもう「この人、ナチュラルに生き残る気だ」と伝わる。
髭がボーボーっていうのは古式ゆかしい漂流ものの定番だし、そういう意味でも新しくて古典的な作品を作ろうという狙い通り。
あとは一見クールなのに豪胆、火傷注意な熱さを秘めた女性といえばおなじみのジェシカ・チャスティン。
最後まであきらめずリスクをとってでも全力で部下を救おうとする古き良き「船長」像がどこか懐かしく、なおかつ新鮮でもありました。
まるで宇宙史の新たな1ページを目撃したかのような気分にさせてくれるエンディングもうれしかった。