劇場公開日 2016年2月5日

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「超ポジティブな火星脱出劇」オデッセイ スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0超ポジティブな火星脱出劇

2016年2月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

単純

リドリー・スコット監督作品だけに、もう少し暗く絶望感に満ちた作品に仕上がっていると思ったのですが、これは予想外、どんなに絶望的な状況でも、思いっきり前向きで超ポジティブな主人公ワトニーの姿に、絶望を希望に変えようとする姿に、感動しましたよ!
リドリーにしては、珍しく普通に手に汗握って感動できる作品に仕上げてきましたね。
おおよそ皆に共感してもらえる作品を作ると言う新たな境地に入ったリドリー御大、ある意味老いてますます進化していると言えるかも。

まあ悲壮感に欠け毒要素も少ないんで、物足りないと思う方もいるでしょうが、私は単純に好みの作風だったので甘めの満点評価です。
水なし、通信手段なし、酸素も食料もわずかの状況で、死んだと思われ火星に一人取り残される、悲壮な作風にしようと思えばいくらでもそうできる状況で、あえてしないのが心憎い。
希望が見えそうなところで新たな絶望がやってくる、でも決して諦めない超ポジティブな精神に、見ているこっちも勇気付けられた作品でした。

ただワトニーが植物学者と言う設定は、いささか都合良すぎたかな。
ってまあ選ばれた人しか行けない訳ですから、別に都合良くもないのか。
結局ただのポジティブ人間なだけでは生き残れないのが宇宙ってことなんですね。
私は詳しいことは分からないですが、今回はNASAの全面協力と言うことで、一見突っ込みどころ満載のような火星生活も、おおよその理論的な裏付けがされていたのは好ポイントでした。

また火星サバイバルだけじゃなく、地球側、それから宇宙船ヘルメス号のクルーとのやり取りも、嫌味の中に愛があったりで、とても心が温まりました。
命の重みが軽んじられつつある今の世の中でも、こうして一人の男を救う為に世界が一つになる(劇中では三カ国でしたけど)、何かいい光景でしたね。
ロシアではなく中国がキーマンになるのは違和感ありありでしたが、感情抜きに考えれば時代の流れ的には実は自然なことなのでしょう。
しかしマット・デイモンの演技はお見事の一言、彼の表情や体で、時間の経過が如実に伝わってきました。
脇役の方々も皆素晴らしかった、それと全編を彩ったセンスの悪いディスコミュージックもね!(笑)

スペランカー