「想像力が全開!一緒に火星に飛びましょう!」オデッセイ Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
想像力が全開!一緒に火星に飛びましょう!
私の中で、「今絶対観たい映画ベスト5」に入っていた本作。公開日が来るのを、首を長くして待っていた。そしてその期待を裏切る事なく、マット・デイモンはちゃんと答えてくれた!
この作品のヒーロー、マーク・ワトニーを演じるマット自身も、映画界入りした当初は、中々役に恵まれない長い下積みの末、「グッドウィルハンティング」でいきなりスターダムに浮上した。
その後、彼はジェイソン・ボーンシリーズの「ボーンアイデンティティー」に出演していたので、アクションもOK、それに加え「リプリー」「ヒアアフター」「恋するリベラーチェ」等難しい役柄をこなす一方で、コメディー作品にも出るなど、芝居もオールマイティーで確かに巧いのはお墨付きと言うわけで、この作品のヒーローが感じるであろう、様々な心の葛藤を演じる要素は彼自身にぴったりだと思いませんか?
宇宙飛行士と言うと一見華々しいが、下積みの長い訓練の末の成功。火星到着と言う栄光並びに突然の事故に因る絶望と死の恐怖。
そんな極限下で人間はどうなるのか?混乱し、ブレまくる人の気持ちがどう変化していくのか?
その気持ちの変化を砂漠の様な限られた場所で、気の効いた小道具も無い状況で、一人で表現するのだ。
そしてその他は、宇宙基地と言う限られたセット空間の中だけで、一人芝居のシーンが続くのだから、有る意味マット・デイモンの存在の善し悪しで作品の印象が大きく左右されてしまう映画と言えるのだ。
そんな中で、火星には行った事がないマットだが、如何に特殊な環境で人が生き延びる為には、どんな問題を克服し、更に何を考え、前に進んで行くべきなのか?と言う事、自己に向き合い、己の弱さを克服、更なる道を切り開く為の方法を自分だけで考える事の難しさを、彼は小さな表情の変化や、セリフの声の変化で巧く表現していたと思う。
勿論火星を覗いた事の無い観客にも共感出来るような、フィクションで有りながらもリアリティーを失わないような緊迫感を持たせながら、物語を紡いでいく事が要求されるのだから、マット・デイモンにも相当遣り甲斐の有る作品だったと思う。
今では決して、昔のようなハンサムガイの甘いマスクではないけれど、その親父顔の彼でなければ、表現する事の出来ないリアルな緊張感が存在する面白い作品だったと思う。
本作は、映画を観ながら観客である私たちも、自分ならどうする?と言う想像力を常に膨らませてマットと一緒に火星旅行をしなければ、一人映画館の椅子に取り残され、発射出来ないで、おいてけぼりをくわされてしまう事になるかも知れない。
リドリースコットの作品なので、「ブレードランナー」「エイリアン」等を撮ってきた人だけにSF作品には慣れているだろうけれど、特撮技術が進歩して、視覚効果的にリアルな異空間を演出出来るようになった分、より人間的な心の部分にフォーカスしないとアンバランスな作品になってしまうと思う。そこを巧く、あくまでも科学を扱う人間の存在に主体を置いて、心理的に見せる作品と仕上げたからこそ、突っ込み処満載で有りながらも、飽きずに鑑賞出来る作品になったのだろう。
ところでジェフ・ダニエルズがNASAの責任者役として久々に出演しているのも嬉しかった!
何せ「スピード」の爆弾処理班の彼が格好良く印象に残るのだが、彼も中々大きな役処に恵まれないのは少し残念だ。