「現代っ子スパイダーマンの瑞々しい青春」スパイダーマン ホームカミング 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
現代っ子スパイダーマンの瑞々しい青春
スパイダーマンシリーズの3代目。健気で真面目なトビー・マグワイア、内向的でナイーヴなアンドリュー・ガーフィールドに対し、トム・ホランドが打ち出したのは「現代っ子」のピーター・パーカー像。冒頭から映画監督を気取ってスパイダーマン研修を撮影して遊んでいるし、学校で虐げられてもなんだかへこたれるでもなく、ひ弱そうで案外逞しく暮らしてるこの感じって、ネット上やSNS上に自分の居場所があることで多少現実がつまらなくても平気でいられる現代っ子の強みそのものという感じ。まさに現代の高校生像。いじめられて「可哀相」に見せるんじゃなくて、「ま、いいや。だって俺スパイダーマンだもん」って開き直れる強さとユーモア。これはこれでいいんじゃないの?
やっぱりついこの間までティーンだったホランドが演じるとそれだけでピーターが若返る感じがする(マグワイアもガーフィールドも出演時は20代後半だった)。役者の年齢が若返った分、作品自体もなんだか非常に若返ったような感じがあって、とにかく爽やかで瑞々しい。見ようによっては「キャメロン・クロウ meets スパイダーマン」とでも喩えたくなるような青春の息吹が立ち込めている。そしてそれだけ躍動感が増し、走り抜けて駆け抜ける2時間はもうあっという間。ユーモアも存分に振りまかれていて、ピーター自身にも大いにユーモアがあるキャラクター設定になっていてそれもなんだか爽快。マグワイアのスパイダーマンは正統派な感じだったし、「アメイジング・スパイダーマン」はちょっとクリストファー・ノーランを齧ったような暗さがあったりしたけど、この最新作はもうとにかく明朗で爽やかでユーモラス。さすがに「デッドプール」とまでは言わないにしろ、爽やかながら痛快なユーモアを感じる快作だった。
いやいや、いろいろ言いましたけど。結局何がよかったって、トム・ホランドが可愛いってことですよ。どっからどう見たってイギリス人顔にしか見えませんけどもさ。何ってもう可愛くて。アイアンマンがいじめながらも可愛がりたくなる気持ちが良く分かります。なんだかキャンキャンよく鳴く仔犬みたい。何しろ可愛い。もちろんそれだけじゃなくて、「インポッシブル」で子役ながらドラマティックな演技を魅せただけのことはあってちゃんと演技ができる人。主役の看板を背負える器を感じるので、そういう意味でもホランドのスパイダーマン起用は表目に出たのではないだろうか?イギリス人顔にしか見えないけど(二回目)。
ひとまずこの映画はピーターが正式にスパイダーマンになるまでを描いた、全体の物語においては序章。でも幸先は良し、という感じ。3Dの迫力も手伝って最初から最後までワクワクしながら心から楽しんでいられたし、「アベンジャーズ」などに詳しくなくても十分楽しめる内容だったのでとても安心した。そして何よりも、ちゃんと作品が新しくなってオリジナリティを持っていたことが嬉しかった。今後もこのユーモアと現代的な感性を生かしたストーリー展開を期待するし、トム・ホランドにはいつまでも若々しくキャンキャン鳴いててもらいたいと願う。