劇場公開日 2016年1月30日

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「見ざる聞かざる障(さわ)らざる」残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5見ざる聞かざる障(さわ)らざる

2016年1月31日
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鑑賞方法:映画館

怖い

『予告犯』『白ゆき姫殺人事件』の中村義洋監督最新作。
彼は『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズの
演出とナレーションも多く手掛けているのだけれど
(「と、でも言うのだろうか……」っていうアレね)、
実は映画としてのホラーって最近ほとんど撮ってない。
果たしてどんなホラーになるのか、楽しみにしていた。

結論としては……
ぎょっとさせるようなシーンは少ないし、『リング』
『呪怨』のような強烈なビジュアルの恐怖は無い。
だが、それでもこの映画は怖い。すんげえ怖い。
瞬間風速の強い台風ではなく、じっとりべっとりした
梅雨のような厭(いや)な感じ、とでも言うか。
「あー怖かった~」で終わる映画なら幾らでもあるが、
“その類いの話”を信じる人なら、この映画は観賞後も
しばらくその厭な後味を引き摺ると思う。
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実録ホラーものを手掛ける作家の“わたし”のもとに
届いた、女子大生“久保さん”からの手紙。
そこに書かれていた怪奇現象は、「無人の寝室から、
畳を掃くような音がする」というもの。

調査が進んで怪異の正体がハッキリしていくかと思いきや――
時代を遡れば遡るほど「湧いて出る」、忌まわしい逸話の数々。
自殺に他殺に事故死に変死、おぞけを覚えるほどの死屍累々。
怪異の因縁はまるで感染症のように拡がり続け、
どこまで行っても終わりが見えない。

この映画は、話が進めば進むほどに不気味さが増していく。
言うなればいろんな色の絵の具を重ね塗るかのように、
進めば進むほどにどろどろと澱んでいくような感じなのだ。
終盤にもなると、「……待てよ……この映画観てる
自分は大丈夫だよな……」という不安すら覚える始末。
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それに本作、疑似ドキュメンタリーとかそういう
スタイルを取ってる訳では無いし、おまけに
名のある役者さん達もがっつり出演してるのに、
醸し出される“実話感”がハンパない。

人の怨み辛みが残りそうな事件事故というのは
僕らもしょっちゅうニュース等で耳にするけど、
本作に登場する逸話の数々もやけに身近な話ばかり。
「親戚の○○さんとこの娘さんが……」
「実は近所のあのお婆ちゃんは昔ね……」
「ずっと前に新聞にも載ったけどあそこの家は……」
みたいな。

また、大抵のホラー映画は主人公らが味わう恐怖の
シーンと真相究明シーンを交互に描く流れがまるで
フォーマットのように用いられるが、本作はそこも独特。
恐怖シーンは基本的に、投稿された手紙や主人公らが
行うインタビューからのイメージとして描かれるので、
“現在起こっている”恐怖シーンがほとんど登場しない。
いわば観客には主人公たちと同様、「気味が悪いけど
自分はあくまで聞き手だし」という安心感がある。
だが、話が進むに連れてその壁が少しずつ崩れていく。
そのじわりじわと侵食されていくような感覚が、怖い。
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惜しむらくは、クライマックスの恐怖の畳み掛けを
もっとしつこくやってほしかったり、「最後あんたで
締めるんかいッ」というキャラでエンドロールを
迎えてしまう所で消化不良を覚える点。
まあ……実録ものの雰囲気を狙うならやりすぎは禁物
なので、あの辺が落とし所だったのかも知れないが……。
エンドロールでは劇中であいまいになっていた
あるアイテムが登場して“厭な後味”に貢献してくれるので
そこはよしとするか。
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土着的、と書くとかえって身近な感じが薄れてしまう
気がするが、斬新ながらも実に日本的なホラー。
僕はホラー映画にかなーり点が甘い方だと思うので
判定4.5は付け過ぎと思う方もおられるだろうが……
個人的にはかなりの秀作だと思います。

にしても、あんな恐ろしい現場取材にまで
付き合わされた“久保さん”かわいそう(笑)。

<2016.01.30鑑賞>
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余談:
僕は一昨年に今のマンションに引っ越した。で、
細かい所はもううろ覚えなのだが、その部屋探しの際、
築約40年2階建て一軒家の情報を見掛けたのを覚えている。
5人家族くらいが住めそうなそこそこ大きな間取り。
家賃はたしか……月35,000円……。
……やめといて正解だった……と、でも言うのだろうか。
(↑書きたかっただけ)

浮遊きびなご
uncle50さんのコメント
2016年2月15日

アバターの犬は賢そうですね!浮遊きびなごさんは愛ちゃんの映画のフアン
のようで、よくレビューを拝見していますが楽しみです。私もフアンですが
彼女も美少女から成人の麗しい女性に進化しました。今回の役では淡々と建
築専攻の学生さんを演じていましたが、これまでのホラー系が多かったのに
較べ普通の方でやや異質?な感じもしましたがね・・・
ところで、私が今、住んでるところはすぐ近くに小さな古墳があります。何
も気にしていませんでしたが、穢れが残っていても可笑しくはないんですね
幸い今のところ何も支障はないようですが、穢れは何年くらい残るのか?1千
年も経てば影響ないんでしょうかね。それと祟られる方はどんな基準で選ば
れるのか、主演のお二人が祟られても不思議ではなく、途中で亡くなってし
まっても当然なのにね!
新しいホラーとして評価したいと思います。原作を読んでみたいが、愛ちゃ
んの新作公開が迫っているので気になります。彼女には今年も活躍して欲し
いものです!!!

uncle50
GokiPinoyさんのコメント
2016年2月14日

フィリピンでもNetflixが始まりまして、
VPNを通せば邦画も見られるようになりました。
そんな訳で漸く貴殿のレビューを、
実際に参考にさせてもらうことが、
出来るようになったところです。

お好きなジャンルから
ちょっと外れるかも知れませんが、
実はフィリピンって、ある時期、
B級ホラーのロケが多かったようです。

たとえばこのウエブサイト
angeleyes.dee.cc/eddie_romero/eddie_romero.html
エディ・ロメロ監督のおすすめ映画
goo.gl/YjjVqj
半獣要塞ドクター・ゴードン
www5b.biglobe.ne.jp/madison/worst/doctor/twilight.html

トランスバトラー
angeloo8.blog.fc2.com/blog-entry-74.html
スパイダー・ボーイ ゴキブリンの逆襲
eiga.com/movie/80625/

題名見ただけで引いてしまうモノが多いですね(苦笑)
それではまた、お邪魔しました。

GokiPinoy
ポルナレフさんのコメント
2016年2月9日

観たいですが、怖いの嫌だヽ(;´Д`)

そんな人でも観れますか?

ポルナレフ