「今ここにある戦争」ドローン・オブ・ウォー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
今ここにある戦争
これが、未来の戦争か…?
否! すでにもう、“今ここにある戦争”だ。
だからこうして、映画として描かれる。
ターゲットをロックオンする。
だが、派遣された海外の現地ではない。
米国内。基地内。コンテナの中で。
監視も攻撃もドローンによって。たった発射ボタンを一つ押すだけ。
一日の任務が終われば、普通に帰宅。家族と過ごす。
そして再び任務に就く。
現地で敵兵に狙われたり、命の危険に晒される事などナシ。絶対安全。
だが…
ただドローンによる遠隔操作で映像を見て、標的を無情に攻撃。それこそ本当にゲーム感覚。
そこに感情は無い。
例え現地の一般人が暴力を振るわれても、助けてやる事など出来ない。ただ傍観するだけ。
それが、任務だから。
ただただ無情に、命令通り標的を殺す。
やられる前に、やれ。
死と隣り合わせの戦地で精神をすり減らし、陥る戦争後遺症=PTSD。
それは、絶対安全なこの戦場でも。
一体何と戦っているのか、自分は何をしているのか、任務と現実の境すら分からなくなってくる。
やがてそれは家族関係にも影響を…。
アンドリュー・ニコル×イーサン・ホーク。
その昔、『ガタカ』で近未来の管理社会を痛烈に描いたコンビが、本作ではドローンを使った戦争の実態とそれによって苦しむ兵の姿をリアルに描く。
派手さも無く、どちらかと言うと全体的に静かなタッチ。
PTSDに苦しめられても、兵たちは何かを犠牲に“今ここにある戦争”を続けなければならない。
ゾッと恐ろしい作品でもあった。
コメントする