「自信に満ち溢れた素晴らしき女性(ヒーロー)」ワンダーウーマン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
自信に満ち溢れた素晴らしき女性(ヒーロー)
何かとマーベルより叩かれるDCフィルム・ユニバースだが、そんなDCがマーベルより勝ってる点も幾つかある。
まず、マーベルより先にアカデミー賞受賞。(『スーサイド・スクワッド』でメイクアップ賞)
マーベルより先に女性監督の抜擢。(マーベルは『マイティ・ソー ダーク・ワールド』で残念ながらお流れ)
マーベルより先に女ヒーロー単体映画を公開。(マーベルはこれから『キャプテン・マーベル』があるものの、期待のブラック・ウィドウ単体作は未だ実現せず)
『マン・オブ・スティール』『バットマンvsスーパーマン』『スーサイド・スクワッド』…。
ウケが悪いDCユニバースだが、自分はそれなりには肯定してきたつもり。
DCだっていつか必ず快作を放ってくれると信じて。
そんなDCが遂にやってくれた!
それが、まさしく救世主、『ワンダーウーマン』だ!
DCの女ヒーロー単体映画は何も今回が初めてじゃない。
『キャットウーマン』や『エレクトラ』もあった。さらに遡れば、『スーパーガール』。
しかし、いずれも惨敗。
女ヒーロー単体映画は失敗する。
まるで暗黙の了解のように業界に広く知れ渡り、それ故マーベルでさえ踏ん切り出来ないでいる理由の一つ。
なのに、何故『ワンダーウーマン』だけこんなに大ウケした?
それは、幾つかの要因が必然的に素晴らしく相乗したからに他ならない。
まず、ストーリー。
秘められた力を持つ者が世界を守る。
この単純明快さ、痛快さ!
ヒーロー映画はこれでいいのだ。後はどう味付けするか。
同時にこれは、全てのアメコミ・ヒーロー映画の原点である78年の『スーパーマン』の様式をしっかり継承もしている。
そして、ライトな世界観。
DCユニバースはこれまでとにかく重く暗かった。
が、本作では、例えば序盤のダイアナが生まれ育った島の青々とした空、海。
ここだけでこれまでのDCユニバースとは全然違う印象を受け、自信のほどさえ窺えた。
“ダークナイト症候群”で御法度になったようなDCユニバースに於けるユーモア解禁も嬉しい点。(『スーサイド・スクワッド』にもユーモアはあったけど、あれはユーモアと言うより“ノリ”って感じだったし)
ダイアナの天然っぷりは笑える。
眼鏡をかけたり洋服を着たり、回転ドアに手こずったり、それでも剣を手離さないカルチャー・ギャップは萌え~!レベル(笑)
絶妙なスパイスとなってるのが、ロマンス要素。まるで調味料のように、隠れ味でもありメインの味のようでもあり、実に巧く据えられている。
このロマンスが結ばれないものである事は始めから分かっている。
だからその切なさも静かに胸を打つ。
さあ、いよいよガル・ギャドットについて大いに語りたいと思う。
何と言っても本作最大の魅力は、ギャドット!
『ワイルド・スピード』シリーズで彼女を初めて見た時驚いた。誰だ、この、クールビューティーな女優は!
『BvS』での登場シーンにはしびれた。何だ、このカッコよさは!
いつか彼女の魅力をたっぷり堪能出来る主演映画を見たい…そう思った方は大勢居る筈。
そこへ、待ってましたとばかりに『ワンダーウーマン』!
兵役経験ありの身体能力が魅せるアクションの力強さ、しなやかさ。
ミス・イスラエルでもある美しさ。
2児の母でもある女性としての凛とした逞しさ、優しさ。
度々映像化されてきたワンダーウーマンだが、ガル・ギャドットという逸材が現れるまで、再び待っていたのだ!
まだまだキリが無い。
見捨てられようとしていた町を救おうと単身突入するカッコよさ。
孤島のプリンセス、ダイアナが如何にして真にワンダーウーマンとして覚醒したか、世間知らずのお嬢様が洗練された大人の女性への成長。
カルチャー・ギャップの可愛らしさ、初めての恋を知る姿にメロメロになる事必至。
もうホント、ギャドットに首ったけ!
ギャドットは表の魅力であり、裏…いや、真の立役者、もう一人の“ワンダーウーマン”は、言うまでもなく監督のパティ・ジェンキンス。
『モンスター』以来となる彼女がアメコミ映画を手掛けるとは異色の抜擢だが、どちらも“社会に於ける女性の立場”という点では通じるものがある。
『モンスター』で描かれていたのは、実在の連続女性殺人鬼の話ではあるが、虐げられる女性の哀しみ。
本作では、世界から隔離された島で古いルールに縛られる女性がその殻を打ち破る。
それはまさしく、男上位のハリウッドで苦汁を舐めさせられていた女性たちがその立場を覆す。社会(=ハリウッド)で女性の存在意義や意味を訴える。
パティ・ジェンキンスは女ヒーローを通じて、一石を投じたのだ。
クリス・パインは実にいい役回り。
彼の秘書やチームもナイスな面々。
ダイアナの母と叔母も勇ましい。
意表付いたのが、敵。
確かに邪悪なる者の存在や力と戦うが、ダイアナが本当に戦っていたのは戦争、人間の悪しき心。
世界を救う事が使命と言っても、その世界を見た事すら無い。
初めて見た世界は…、暗く、淀み、闇に覆われていた。
自分の無力。
果たして人間は守るに値するか。
葛藤や様々な経験や出会いの果てに…。
意外なほどに胸熱くさせ、ドラマとして極上の仕上がりになっている。
強いて言えば残念なのは、あのテーマ曲は流れるものの、ジャンキー・XLが音楽担当じゃない事かな~。
思えばDCはその都度アメコミ映画に革命を起こしてきた。
78年、大作アメコミ映画の原点となった『スーパーマン』。
89年、アメコミ映画に作家性を反映させた『バットマン』。
08年、リアリティーでアメコミ映画の概念を変えた『ダークナイト』。
単なるブームじゃなく、アメコミ映画の歴史を動かしていたのは実はDCの方なのだ。
そして今年…
男ばかりが社会に進出し、ハリウッドやアメコミ映画で主役を張らせない!
自信に満ち溢れた素晴らしき女性=ワンダーウーマンが魅了する!
今年のアメコミ映画がナンバー1になる事はまず間違いないが、今年のBEST作の一つにもなりそう。
と言うより、アメコミ映画の傑作の一つとして名を残すだろう。
それが『ワンダーウーマン』で本当に良かった!
…やっとのいい流れ、お願いだから『ジャスティス・リーグ』で逆戻りしないでね。
ガル・ギャドットの名前があまりに個性的で頭に入らなくて困った。ワンダーウーマンで初めて発見したが、こんな完璧な女優が世の中に存在するなんて夢のような世界だと神様に感謝したのを、今でも覚えています。以後、何度も見返しています。
ガル・ガドットの美しさ、しなやかな体躯、これらがなければ成立しない部分が多いと思います。
MCUの「ブラック・パンサー」しかり、世界の抱える諸問題を提議して、人々の常識や価値観を覆すような作品を送り出しているのが、アメコミ原作のスーパーヒーロー映画たちであることが、大きな意味合いを持っているように感じます。
皆が渇望していることを的確に捉えて、映画という形にして提供するというのが、一番重要ですね!