「無駄のない編集は舌っ足らずと紙一重」ベル&セバスチャン うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
無駄のない編集は舌っ足らずと紙一重
大きな犬を、怪物扱いにして、水浴びをしたら、「あらビックリ、愛らしいピレネー犬でした」といういきさつを始めとして、とことん実物主義で、映像化にこだわったいい映画。CG全盛のご時世に、やっぱり映像はうそをつかないと確信しました。
少年の表情がとてもいい。
隠れたファインプレーとしては、編集の上手さもある。
前半の、可愛そうなシカの親子のエピソードは、ハンターに撃たれる決定的シーンこそ映し出せたが、野生の小鹿を保護し、家畜の羊に授乳させるシーンはおそらくパペットを駆使したと思われる。決定的映像は使われていないし、かなり短めのシーンになっている。
それでも、何が起きているかを知るには十分で、嘘くささも全くないという、奇跡の編集をやってのけた。
映画全体にこの精神は生きており、「全部を見せる必要はない。見る人の想像力がそれをおぎなう」と言わんばかりに、必要最小限の映像を残して、多くを語らず。の姿勢を貫いている。
美しい山の季節の移り変わりや、厳しい冬を生き抜く人々の強さ、そして、ここにもナチスの虐殺から生き延びた人たちのドラマがていねいに語られ、最後まで見応えあるお話になった。
小学校低学年のうちに、子供に見せたいので、日本語吹き替え版がおすすめ。
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