「巧い邦題。」顔のないヒトラーたち ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
巧い邦題。
顔のない、とは巧い邦題だと思った。ハンナ・アーレント曰く
思考停止の凡庸が生む悪が良き市民だったはずのドイツ人を
大量虐殺へと駆り立てた忌まわしき戦争の実態。誰もが消し
去りたいと思う過去の出来事を蒸し返そうとする新米検事が
迫害を受ける。自国民が自国民を裁くというのは苦渋に満ち
た決断であることはよく分かる。しかし彼の蒸し返しにより、
アウシュビッツを知らないドイツ人がどれほどいたかという
信じられない事実も浮かびあがる。ナチス親衛隊だった男が
教師を勤めていることを突き止めたジャーナリストの告発に
より「アウシュビッツ裁判」までの長い道のりが語られていく。
いや、よく頑張ったものだと思う。自国に敵視されながらも
真実を追い求める検事・ジャーナリスト・生き残ったユダヤ人。
自国民の戦争犯罪を認め裁判にかけることの重要性と、この
事実に蓋をして何事もなく日々を謳歌する(顔のない)加害者
達が更なる支配者を生むきっかけとなり得ることを示唆する。
日本にも真摯に向き合ってこなかった犯罪がありはしないか。
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