「作り手の誠意についての疑問【反省文追記3.18】」湯を沸かすほどの熱い愛 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
作り手の誠意についての疑問【反省文追記3.18】
芸術作品の表現において、『必然性』を論点にするのは公平公正な態度とは言えない、と反省しました。作者がこの物語には必要だと思ったものについて、また相応の覚悟を持って表現したことについて、受け手側はそれがどういう意味か、何が込められているか、肯定的に捉えるか、無意味だと捉えるか等を自由に考えればいいのであって、必然性の文脈で語るのは、大げさに言えば、表現の自由とか幅を狭めることに繋がるので、ある意味で危険な思想だと思い、大いに反省し、追記いたしました。その点以外の内容は不変です。【2017.3.18】
『死ぬまでにしたい10のこと』と同じ余命短い母親の最後の日々、ということで、りえママが健気で気丈に振る舞うだけで涙が溢れてきます。
で、鑑賞後ですが。予備知識や製作意図などの情報が全くないまま観たので、素朴な疑問が浮かびました。
えっ、あのラストのオチのために、2時間のドラマがあったの?
ドラマや現実の火事のニュースでも分かる通り、お風呂を沸かす程度の火力では、黒焦げの遺体と異臭が残るだけで、たぶん遺灰や骨にまでなりません(火葬場の1000度以上の火力で1時間かかります)。死体遺棄の法律違反を犯してまで探偵さんが協力する動機‥‥生前、りえママから頼まれてもいないし‥‥も⁇⁇
あの愛するお母さんの黒焦げ遺体が風呂釜に残るような残忍な状況‥‥これってブラックジョークにもならないし、ドラマの流れからしても必然性がないですよね?
必然性があるとすれば、火葬費用を払えないという経済的な理由?
赤が好きだったというだけで、煙まで赤くなるのもよくわからないし、黒澤明監督の『天国と地獄』へのオマージュとも思えないし。
個人的な感覚では、きちんと遺灰と骨になったとしても燃料にしてしまう行為は、生みの親を知らされる以上の驚きであり、故人の尊厳性の冒瀆に思えたのですが、私の方が異常なのかな?
お涙頂戴の感動作なんて簡単に作れるんだよ、オチに爆弾を仕掛けたけど、さあどうする?
という、監督からの日本映画界に対する挑戦状なのでしょうか?
イジメという重いテーマについても、あの勝負下着をあの場面で使ってくるあたり、結構不誠実さを感じてしまいました。実際にイジメの状況に苦慮しているご家族の中には、立ち向かわずに逃げるしか選択肢がないかたもいらっしゃると思います。女の子の親としてあの裸は、みていられない人もいるのではないでしょうか?その辺の配慮にも欠けた脚本とも言えるのではないでしょうか?牛乳のゲロまでジョークの一種として扱ってたように見えました。そういった影響(深く傷つく人がいるかもしれない)への想像力とか配慮とかがなかったとしたら、それは製作者としての誠意ある態度とは言えないのではないか、ということです。
うーむ、神経質に考え過ぎだろうか?
不登校の親御さんや、その娘さんとも保健室登校で
触れ合った思いもあるので
す。私自身、批判はしなかったのですが不登校の中学生の女の子に林間学校のお土産にキーホルダーをもらったことも嬉しかった思い出の1つです。こちらの映画は実話ベースではないから良いけれど、当事者の声は綺麗事では済まない記憶があります。
ただ、グレシャムのレビューにあるようにラストの葬儀のやり方、銭湯の火葬については現実味が無いと思いました。赤い煙の色も空々しく見えてしまいました。オダギリジョー演じる夫が葬儀費用無かったとしても、松坂桃李演じる青年とかに借金をして少しずつ返済していくとか、の方がいいと思いました。
杉咲花さん演じる中学生の娘さんが制服を盗まれて
学校内で下着姿になるシーンも性的描写、嫌な表現とは思わなかったです。
実際のいじめはもっと深刻な実態を自分は目の当たりに見てきているので。
ただ、大人の事情で振り回される子どもが可哀想に思えて感動には至りませんでした。
グレシャムさん、レビューしてないですが監督、製作した人が見る人に伝えたかったことは理解できるストーリーでした。家族の愛情
育ての親が血の繋がりのない娘を自分の娘のように想う愛、家族以外の人との交流、宮沢りえ演じる親が娘に手話を教えた意味、とかです。癌で余命宣告されて
亡くなってからやり残したことや叶えられなかった夢を生きている家族が代わりに叶えていくきっかけになるようなラストでした。
琥珀さん、ありがとうございます。返信遅くなって申し訳ありません。
全く琥珀さんのおっしゃる通りです。表面的には良い話で収まってる様に感じ取れ、観客もその部分に感動していますが、実はその先に本当の問題が隠されている事に気付かないんですよね。感動する幾つかのエピソード、一見問題解決している様に見えますが実は何も解決してないと思います。イジメもネグレクトも。
例えば制服が返ってくるシーンにしても、置いて逃げるのではなく、手渡しでイジメっ子から「ゴメン」と一言でもあればまだ希望が見えて来ますよね。ネグレクトの件でも母親から「絶対迎えに来ますので、それまでよろしくお願いします」とか連絡あればこれも次に繋がると思うのですが…
大げさな事言うと、コレ最近の政治的な右傾化の流れと思想信条が同じになって来ているのでは無いかと危惧しております。同調主義的な物も感じますね。考え過ぎかも知れませんね。