「メリッサ・マッカーシーは、21世紀のウーピー・グールドバーグかも?」SPY スパイ 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
メリッサ・マッカーシーは、21世紀のウーピー・グールドバーグかも?
メリッサ・マッカーシーは、本来スター女優向きではないはずだ。決して美人ではないし、スタイルがいいこともない。実際、「ブライズメイズ」で大ブレイクを果たすまでは名脇役というポジションで活躍していた。しかし、ブレイク以降主演作が続き、しかもいずれもヒットを飛ばしているあたり、度量の大きさに感嘆する。もしかしたら、21世紀のウーピー・グールドバーグ的な存在にもなりえるかも知れない、なんて期待感まで出てくる。
しかもマッカーシーには愛嬌があるだけでなく、意外にもアクションも決まる女優だ。元も子もない言い方をすると「動けるデブ」だ。フィジカルなコメディもうまいし、アクションシーンをやらせても動きが機敏で今作のようなアクションコメディがまたちゃんと似合う。この手の女優が他を探してもなかなか思い浮かばないあたり、マッカーシー、いまや喜劇女優のトップかも知れない。容姿が劣った人間に対する差別を笑いにまで完全に昇華出来るのは今やマッカーシーしかいない。ポール・フェイグ監督との相性がとりわけ良いのか、画面の中で活き活きと笑いの爆弾を投げ込んでいる。
あくまで「アクション・コメディ」であるため、ストーリーの細部には弱い部分もあるが、それ以上に登場人物が次々に笑いを引き出してくれるので、飽くことなくスピーディーな展開に乗ることが出来る。脇を固めるのがジュード・ロウ、ジェイソン・ステイサム、アリソン・ジャニー、そしてシーンスティラーのインパクトで映画をかき乱すローズ・バーンだというのも豪華だし、芸達者が揃っているので彼らの生み出す喜劇がいちいち面白おかしい。ジェイソン・ステイサムのバカさ加減なんて、声を出して笑ってしまったし、すっかり一皮むけたローズ・バーンのビッチ演技がまた弾けていて最高だった。
こういう「笑い」だけに真正面から取り組んだコメディもたまらなく好きだ。そしてそれを、おデブな喜劇女優の単独主演で大ヒットさせたアメリカという国の偉大さも感じる。それに対して、この作品をDVDスルーさせた日本は、そういう点ではまだまだだなと思う。