この世界の片隅にのレビュー・感想・評価
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2025年1月に観ました
アニメは苦手でしたが、これほど感情移入するアニメは初めてです。お互いを思いやり助け合わないと生きていけない時代だと思います。平和な現代の競争社会にはない、日本を見せていただけました。ありがとうございます。
高評価のビッグタイトルなので観てみたが
この作品を世に送り出してくれた全ての人に「ありがとう」
忘れられない物語がある。その物語を観たときの生の感情は再び味わうことはできない。でも、その物語が映画として残っていることで、観る度にその感情に近づくことができる。何度でも。だから、ありがとうと言いたい。この作品を世に送り出してくれた全ての人に。
2017年1月のある日、私は映画館へ足を運んだ。郊外のショッピングセンターに併設された小さなシネコンだった。この映画を観て何度もクスッと笑った。そして終わる頃には涙が止まらなくなっていた。映画館で泣いたのは生れて初めてだった。パンフレットを買い、原作漫画を買って読んだ。それから2回観に行った。同じ映画を3回も観たのも初めてだった。そして、2回目も3回目もどうしようもないくらい泣いた。どうしてこんなに涙が出るのか自分でもわからなかった。でもそれはとても暖かい涙だった。
この作品は、戦時下に生きたおっとりとした女性「すずさん」を描く。彼女が少女から大人になる過程を、彼女の目を通して見た世界を、ときに彼女の空想を織り交ぜながら描く。そして戦争という特殊な環境下でも、好きな絵を描き、着るもの、食べるものに関心を寄せ、婚家での人間関係に悩み、夫との関係に悩む、どこにでもある「日常」を生きる姿を描く。
野草を使ってまな板をバイオリンのように肩にかけて料理をする場面にほっこりさせられる。砂糖をアリから守るために水に落とすというドジにクスッと笑う。どこまでいっても憎めない、ちょっとぼーっとした天然なお嫁さん。すずさんの愛らしさに惹かれる。
場面は、月日の経過を文字で伝えつつ、刻一刻と進んでいく。じわじわとその影が迫ってきても、どこか実感がなく、遠くの世界の話のように感じていた戦争。それが突然やってきて彼女の幸せな日常を、暴力的に一瞬で破壊する。その破壊の場面は、暗転したスクリーンの中で、間接的に、しかし強烈な表現で描かれる。こんな表現は観たことがない。
日常を破壊されてもなお、痛みを抱えて別の日常を生きなければならない彼女は、兄の死さえ実感できず笑い話にしてしまう自分を「歪んでいる」と言う。そして、原爆投下。終戦。玉音放送を聞いた後に地面に伏して泣いた彼女。彼女は何故こんなに感情を爆発させたのか。なぜ怒り、悔し泣きをしたのか・・・
戦後のすずさんは、戦後の「日常」を生きる。そして新しい家族を創る。少女だった彼女は、たった数年で大人の女性になり、母になる。
呉の街を見下ろすラストカットは、新たな日常を生きていくすずさんたちの未来を感じさせる・・・
悲しくて泣くんじゃない。どんなことがあっても力強く日常を生きるすずさんと周りの人たちに心打たれて涙するのだ。
どうしてこんなに惹かれてしまうのか。
それは、この作品が、この時代にたくさんいたであろう、名もなき市井の人々の生き様に焦点を当て、世界の片隅の一人一人に、かけがえのない日常と物語があったということをまざまざと見せたからだと思う。
そして、「すずさん」という唯一無二の愛すべきキャラクターの存在。彼女を生み出した、原作者こうの史代氏、映像化した片渕監督、声で命を吹き込んだ「のん」。
リアリティに拘りながらも淡く、やさしいタッチの絵。ささやくようにやさしく歌うコトリンゴの声。この作品の世界観を表現するために、なくてはならない要素に携わった人々の、この映画を届けたいという、並々ならぬ想いが、じんわりと伝わってくるのだ。
最後に。
この作品は、反戦映画ではないと私は考えている。
しかし、戦争が、長い時間をかけて徐々に日常に入り込み、突然牙を剥く性質を持っていることを忘れてはならない。そして、日常が、どれだけかけがえのないものであるかを、忘れてはならない。そう思う。
これからも、何度も観て、何度も涙するであろう、宝物のような作品である。
テアトル新宿が大変なことになっていると聞き
劇場公開時鑑賞。「片渕須直監督?はて?」と最初は思ったが、『アリーテ姫』の監督と知り一気に前のめりになった。
当時は配給の東京テアトルさんの株価まで上がったりしてて。公開1ヶ月以上経って少しは落ち着いたかなと梅田に観に行ったら、考えが甘かったり。通常の興行状況ではあり得ない推移してましたよねえ。東宝の邦画と家族向けアニメしか上映しない地方の小規模劇場にすらかかったり、何もかも異例づくめの作品だった。
冒頭の船から陸に上がった場面でもう、非常に丁寧に作られているのが、私にですら見て取れる。銃撃場面の異様な迫力の音響に驚かされたり、夢の場面の特異な演出とか、原作の良さを引き出した上で、さらに上乗せしてくるのはいったいなんなんだろう。原作読んだり、デッキ持ってないのにBlue-rayソフト買って制作過程を見たり、知れば知るほどすごいという言葉しか出てこなくなる。
演者さんはみんな良いですが、サン役新谷真弓さんが好き。
く〜れ〜く〜れ〜。
最初に公開したバージョン。尺の関係で白木リンのシーンは無い
『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が有れば、コチラはいらないかどうか…いらなくないです。
周作が愛した白木リンが登場するべきか否か…登場しなくても大丈夫です。
周作とすず二人への愛や切なさが白木リンの魅力でもあり、美しくも儚いその素敵なキャラクターを割愛した本作は、つまり完璧じゃないのか…完璧じゃなくても大丈夫です。
大人の恋愛をカットしたことでマイナスになったのか…むしろプラスです。
結局『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』と、どちらが好きなんだ…両方好きです。
なぜ…スッキリしていて、ドロドロした恋愛モノ感が薄くて良いと思います。白木リン無しでも充分深くて味があって切なくて面白くて・・・戦艦大和のタッチも素敵ですし、径子や晴美もいて、ちゃんと感動するから大丈夫です。
やっとスクリーンで観れた!
できれば前情報なしで
戦争当時を描いたものではあるけれど
陰鬱としてはいない。
主人公すずのノンビリした性格によるモノで
それでずいぶん救われてもいるし、
彼女が知らない土地へ嫁いでも
可愛がられるのもよく分かる。
この作品では悲しい場面もあるけれど
泣き叫ぶ描写は少ない。
あの当時の人たちは、きっと、
悲しいことも、自分だけではないのだと
表に出すのも控えるようにし、
飲み込んで明るく目の前のことを必死に
こなしていたのだろう。
市井の人からみた戦争というものが
肌感覚で伝わってくる作品だった。
あのおもてなしには驚いたが・・・。
観に行く前にさんざん周りから
とにかく泣ける、涙が止まらない、と
言われてたせいなのか、
ホロリ程度はしたがそこまででは無かったなあと
期待はずれに思ってしまう面もあった。
作品はいいものなのに。
前情報あまり入れなかった方が良かったようにおもう。
もがれた白い手が 僕たちに向かって振られている
僕の娘は、この映画を見ながら泣き、
この映画を見ながら美大に通った。
田舎町に生まれて、すずさんと同じに絵が好きで、誰にも知られずに普通に生きて、うちの娘も大人になっていった。
恋をしたり、大人の男を知ったり、裁縫をしたり、料理したりしながら、彼女は、好きな絵筆と彫刻刀をその手で携えてこの先も生きていくのだろう。
誰の手ももがれることなく、世の娘たちよ、その手で恋をし、男を抱き、裁ちばさみを走らせ、小鍋を揺すっていてほしい。
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娘へ、
あなたのひいおばあちゃんは
空襲警報の中で台所で、子供たちに食べさせるためのぼた餅を作っていました。
ピューーっという爆弾の音に
「あれよ!あれよ!」と言いながらぼた餅を抱えて庭の防空壕に転がりこんできた人です。
片田舎で「ミル」という名の犬を可愛がっていた普通の女でした。
覚えていて下さい。
しんどいに決まっている
戦時中が舞台なのに、のんきだ。明るすぎる。という意見がある。ごもっともである。
私は戦争を経験したわけではないし、話や資料で見聞きしたことしかないが、それらは辛く暗く残酷で目も背けたくなるような史実であると教育されている。我々が知り得る第二次世界大戦はそういうものであり、画風も相まってか、ある意味マイルドな印象を受け、我々の知ってる戦争とはギャップを感じる。
というのも
すずさんと言ったら、能天気、ドジ、のろまでお人よし、ぼーっとしてて、絵が好きがゆえ必死さが感じられない。
しかし戦争はとても理不尽で平等に、懐いてた姪を殺し、好きと言ってくれた幼馴染を殺し、絵を描くための腕まで飛ばした。
絶望の淵、まさに悲しくてやりきれない。
能天気だがこれが窮地であることは分かる。
ドジだが、家に落ちた焼夷弾を身を挺して消さねばならぬ
のろまだが、鷺をこの修羅から少しでも遠くに逃がされねばならない、こんな人間のエゴに巻き込んでならない、と走る。
と行動させざる得ない状況にある
なんてしんどいんだろう、生きる希望が目の前で吹き消される感触、息も絶え絶えままならない。
でも、ただ生きねばならない。足がもつれても、前に歩き出さねばならない、しんどいに決まっているが生かされた、代わりに死んでいったたくさんの命があった。歴史にはされど重要視されない、しがない市民の、この映画がなければ知る由もない、この世界の片隅での物語だとおもう。
なんとたくましいのだろうと思う、途方もなく長い長い道の先で我々の生活があるだとしたら、すずさん、日本は平和になったよと。
どんなに呑気に暮らしていても完膚なきまでに潰す、好きな人を簡単に瞬殺する、どんな正義があっても戦争はよくない、絶対に。
岡田斗司夫め
きれい事で描く戦争
『はだしのゲン』の後に見たが、ゲンが戦争をリアルに、そして当時の子供らの逞しさを忠実に描いているのに比べて
非常に生ぬるく、ほんわかしたムードで、戦争の悲惨さをオブラートに包んでしまった作品。
現代の人は、壮絶な現実をありのまま受け取る強さを持ち合わせてないのかもしれないと、あまりの高評価にそう思わずにいられない。
きれい事の上で頑張ってる姿に感動するらしいが、現実はそんなに甘くない。
ありのままの悲惨さ、壮絶さを受け入れて、初めて人は強くなれる。
他の方も書かれていたが、この映画は戦争がテーマではない。当時の女性の生活を描いたもの、それも甘くのんびりと、穏やかに描いただけ。
胸が打ち震えるような感動や、涙するところが『はだしのゲン』にはあったが、本作には全く感じられなかった。
星二つなのは、それでも飽きずに最後まで観ることができたので、エンタメとしては良く出来てるからである。
この世界の片隅から未来へ。
~さよなら興行~「テアトル梅田を彩った映画たち」にてリバイバル上映。片渕監督のトークイベント付き。
言わずと知れた近年のミニシアター界最大のヒット作です。公開時以来久々の鑑賞。戦時下の広島で日々工夫しながら暮らす普通の家族。しかし戦況が悪化していくにつれその普通が奪われてゆく。広島市から呉に嫁いだすずさんがあの日見たもの。
のんびりマイペースなすずさんにのんの声がピッタリです。戦争中でも人は食べて、寝て、恋もします。誰かとお喋りして、笑い合ったりします。
シンプルで優しい絵とは対照的にそこには間違いなく戦争があります。戦争によって失ったものは何も腕だけではありません。あの日の広島と長崎を忘れず伝え続けることは未来への強いメッセージとなります。子供達にも、海外の人にも、そして今戦争を行っている国の人にも観て感じてほしいです。
~ここから脱線します~
この上映をもってテアトル梅田が32年の歴史に幕を下ろしました。上映後のトークイベントで片渕監督が「残念ながら映画館はなくなってしまうけど、こうして新しい出会いがある。映画は続いていく」っておっしゃっててとても素敵な言葉だと思いました。あの地下の小さな2つのシアターが大好きでした。
「夕凪の街」と作者のあとがき
こうの史代さんの「夕凪の街 桜の国」が好きで、「この世界の片隅に」が出た時には、物足りなさを感じていた。その流れで、最初にこの映画を見た時の評価は「4」。今回見直して、自分の不明を恥じた。
すずさんは生きていればもう100歳とか。こうして(この映画の作製を支えた人々のように)戦争を忘れまいと努力する人たちがいる間は、どうにか大丈夫なのではないか、と楽観的に思いたい。
明日は原爆投下から80年。
追記
この映画を見た後、気になってマンガ「夕凪の街桜の国」を読み直しました。その後、「夕凪の街桜の国2018」を鑑賞。NHKのドラマで、映画として上映された作品(田中麗奈さんや麻生久美子さん出演作品)とは異なります。
大変優れた作品ですが、DVDなどもないようで、なかなか見る機会はありませんが、もしNHKオンデマンドなどを視聴できる環境の人がいたら、是非見て欲しいと思います。
常盤貴子さん、川栄李奈さん、小芝風花さん、平祐奈さん、工藤阿須加さん、谷原章介さん、キムラ緑子 、橋爪功さん等の有名どころが出演しています。
ようやくの鑑賞
他人事とは思えず思わず涙してしまいました。
この映画、予習を全くせずに、とにかく、のんさんが主演声優を務められるということを楽しみにして観に行きました。
フライヤーの朴訥な絵柄も大変気に入りましたので。
ところが、これがかなり困った映画になってしまいました。
そんな思い出でアマプラで再鑑賞です。
すずが右腕を失って大好きな絵を描くことができなくなってしまったじゃないですか。
あれ、まさに自分に重なったんですね。
私5年前に脳梗塞で倒れてしまいまして。
幸い大事には至らず、日常生活には支障なく済んだのですが、どういう訳か?
多分、機能障害に陥った右脳の空間把握能力だか創作能力だとかが全くオシャカになってしてしまったためかと思います。
私も大好きだったイラスト描きが全くできなくなってしまいました。
そんな感じで、何度も何度もうるうる来そうなところをぐっと我慢して、スクリーンに見入っていた訳ですが。
すずが庭の木に引っかかった障子を見つけて、自分の描いた過去絵を回想するシーンで、とうとう涙腺が崩壊してしまいました。
当時はコロナ禍以前でしたので、マスクでそれを隠すこともできず、人前で恥ずかしげもなく、うっくうっくと嗚咽を漏らしてしまいました。
今回もやはりPCモニタを前に喉からこみ上げる涙を流してしてしまいました。
名作って色褪せない。
映画を観て泣いたのは、私の鬱病が原因で離婚した直後に観た『いま、会いにゆきます』以来だったのですね。
ひまわり畑で抱き合うふたりを見ながら、わたしたちもきっとああいう感じで、ずっと愛し合えるはずだったのにな…と。
おちゃらけて、バカみたいな駄文をだらだらと書き連ねる私にも、こういう悲しいバックボーンがあったわけです。
まいったか。←こういうのが、いつも余計(笑)
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