この世界の片隅にのレビュー・感想・評価
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予想を遥かに上回った
最初にこの映画を知ったときは自分の苦手な戦争映画なのかな?と、のんさんがすず役に決まったときは声優向きじゃないだろうと思いあまり期待していませんでした。クラウドファンディングも勿体無いことになるのでは?と。
しかし、予告編を観て、いい評判を聞き観てみると涙が止まりませんでした。劇場で映画を観てこんなに泣いたのは10年ぶりぐらいです。文句無しの☆5つです。
戦争で苦しい生活をする中でほのぼのするような、クスッと笑ってしまうような場面が所々にあり、戦争の悲惨さよりもその中で懸命に前向きに生きる人を描いていて観やすく、無理矢理感動させて泣かせるような演出もそんなに無かったように思えて純粋に楽しめました。悲しい場面もありますが悲しいだけじゃありませんでした。のんさんの声もやはり最初は違和感はありましたがすずさんのキャラにとても合っていて良かったです。
また、街の風景を細かく描いている所、ある場面の現実の風景をすずさんの趣味の絵のよう描いていた所も良かったです。リアルに描くところとそうでないところのバランスというか使い分けが上手いと思いました。一般的なアニメの絵とも「君の名は。」のような写真のような背景とも違うこの作品に合った絵でした。
音楽も戦争ものにしては悲愴感ただよう感じになりすぎておらず、すずさんの心情に寄り添っているように感じました。「君の名は。」みたいにヴォーカル曲が4曲ほど劇中にあったのですが「君の名は。」よりすんなり物語に入っていけました(比較するのもおかしいかもしれませんが)。もちろん普通の曲も良いのですが。
少し気になったのがこの人誰?という人が途中で少し出てくる所。まあ、原作のある話なのでしょうがないとは思いますし、そこまで深く大筋に関わる訳ではないので作品の評価に影響しませんが。
上映館が少ないのが残念です。ロングヒットして上映館が増えて沢山の人に観てもらいたいです。そう思える素敵な映画でした。
いいと思いますが
出てくるキャラクターのほぼ全員が戦争に翻弄される善良でつつましく真面目に生きてる人達の話。
台湾米や太極旗にはちらっと触れられますが、そういう人達は不自然なくらい出てこないし、戦争万歳みたいな人も全くいないし、安心して見られる戦争お伽話みたいなもんかなと思いながら鑑賞してました。
そういう姿勢には疑問を感じたものの、映画としてはものすごくいい出来だと思います。
今年いちばんのアニメーション
映画としてもアニメーションとしても素晴らしい!
徹底したリサーチが見事に作品の中で活かされ、説得力のある画面とともに、スクリーンの隅々まで作りこまれている。(背景はただ緻密というだけではなく、省略を生かしたものも多数)
原作がうまく2時間にまとまっています。
のんさんをはじめとした各声優さんたちの演技もすばらしく、広島弁も忠実に話せているようです。
コトリンゴの歌も好きになります。
原作漫画の世界観をそのまま伝えてくれました
週刊漫画アクション連載当時からの愛読者です。
映画の隅から隅まで、漫画の世界観を大切に、
丁寧で心の籠った作品になっていました。
この世界の片隅でも、
居場所があり、
普通に暮らせて、
誰もが笑い合っていられる
いつまでもそんな世の中であって欲しいと、
願わずにいられない、
素晴らしい映画でした。
アニメで味わう「しあはせの手紙」
原作既読でめちゃくちゃ原作を愛している人であり、
ゲーノーカイの掟によって辛酸をなめているであろうのんちゃんを
(生きてるけど)草葉の陰からこっそり応援する人である、わたくし。
公開初日に一般料金1800円を払って観て参りました「この世界の片隅に」。
とってもよかったです。
漫画では、消えてしまったすずの右手が語る物語があるのですが、
その語りがコトリンゴの歌の歌詞に混ぜ込まれていて、感激しました。
その言葉は聞き取れたり聞き取れなかったりする、ささやかな音量で、
その配分はわざとよなーと思っていました。
のんちゃんの声はすごく個性的なので、それが美点でもあるのですが、
どこにいても聞き分けられる声ですから、のんちゃん自身が浮かんで離れないとか
ないかしらん、合うのかしらどうなのかしらと思っていましたが、杞憂です。
すずとして、生きていました。
原作を読みまくっているのですが、漫画はわりと飛ばし読みしてしまうので、
端々まできっちり読み込めてないことが多くて、
タンポポが白いとか、そんなせりふあったっけとか思いましたが、
帰って漫画を見てみると、ちゃんと書いてあるがな…と自分にがっかりしました。
りんさんの話が殆ど無いな(周作さんはりんさんにほれてたんですよ…)という点に、
ちょっとだけ残念に思っていましたが、でもエンドロール後の右手が描く紅の絵で、
りんさんが描かれていたので、まあ許そうという気分。でも、遊郭に遊びに行ったり、
木登りしたりが無くて残念だなー、という事で、マイナス0.5です。
あらすじは既に知っていますから、新鮮な感動とはいきませんが、
それでもB29の大群が飛ぶ空の恐ろしさ、爆弾が街や家屋に突き刺さる
描写に戦きました。はるみさんをなくしたお姉さんが、すずをなじるところや、
その振る舞いをのちに謝るところなど、原作でも心が震えた部分で改めて
ぐらぐらと心が震えました。
おねえさんが私には泣きのツボなんですよ・・・
あとは、すずと周作がドブでけんかしながら抱き合うところね。
なんとも言えないエロスを見出し、にやにやします。
防空壕でのちゅーもいいですが…
漫画の最終回の「しあはせの手紙」が大好きで、
「今これを読んだあなたは死にます(表記は原文と異なります)」
から始まる2ページにいつも、打ちのめされるような救われるような悲しいような幸せなような気持ちになるのです。どうしていいかわからず泣くしかないのです。
その気持ちを映画でも感じられて、本当に嬉しかったです。
ヒロシマ感が無いのが良い
個人的に廣島県人会(自分だけ会員)に所属しているのです。
見んといけんのじゃ。
原作を読んでいる者なので、そう気構えずに行きました。(原作も「ヒロシマ」感はないです。)
他の作品と抱き合わせで1日2本目でしたが、そんなラフな人間でもなんか最後まで見ていられます。
ちょい辛いのは、「後悔」「喪失」がスゴく身に迫るところ。
のんさんの声でそういう切迫感が出るかは予想がつかないくらいのほとんどの明るい場面と違う。
はだしのゲン的な悲惨さやグロさは全くないのだけど、逆に辛かったなぁ。
でもまぁ、個人的に原作で辛いエピソードは抜いてありますが。
あと、街並みが素晴らしい。
戦前の広島も呉も知らないけど、「そうだったのか」感がして嬉しい。
写真とか地図とかでは知っていても、そこに人が生きて動いている街というのは全然違うものだなぁ、掘り返してしっかり残してもらえてありがたい。
という意味でぜひ見て欲しいです。
親世代と見て、改めて感想を聴きたい映画です。
こんな風に描けるんだね
この映画は凄い!何が?って、色々 色々 凄すぎて語り尽くせない。
いとおしい。すずさんはホワンとしているけど、それだけじゃないの。
戦時下の映画、何処に向かっているのか、観ている私たちは知ってるの。広島…悲惨な場面は殆ど描かれてない。
植物や、虫や、鳥…兎…
市井の人々。
心の描写が素晴らしいよ。
優しさや、怒り、憎しみ …そして哀しささえも、それらが穏やかに描かれている。そんな日常でも人は笑う。ちょっと、浮世離れしてる様な話に思えるかも知れないけれど、案外リアルなんだ。
白鷺の場面では身体が震えた。涙が落ちた。
沢山の人の眼に触れて欲しい映画。
世界中に配信されて欲しい。
のんさん、素晴らしい声優ぶりでした。この感性を大切にこれからも活躍して下さい。
日常に割り込んできた戦争
原作を忠実に(一部時間の都合上カットされています。原作の言葉不足も補っている部分ありました。)描かれています。
戦争映画でありながら基本はフリやオチのある喜劇なので映画館には何度も笑い声があがりました。
そして徹底したリアリティーで描かれた空襲、原爆のシーン。そして、広島市から逃げてくる人々の描写。空襲でなくなってしまった大切なもの。
楽しく穏やかなシーンから一転して心をさしてくるような事態が起こります。
戦争が起こっているんだ、いや、戦争が日常にねじ込んできたんだと悔しさと悲しさが胸一杯にこみあげてきます。
是非ともいろんな人に見て欲しいです。この作品は時代をこえ語り伝えられていく作品になると確信しています。
きっと何年たってもこの映画のことを思い出し見返すだろうと思います。
パンフレットは見終わったあとに買うことをおすすめします。
がっつりネタバレがかいてありますので...(笑)
のんの演技は役にあっていました。
かつ、呉弁と広島弁の違いを学んだりと努力のかいもあってとても自然でした。
あの声だから市井の人々の話なのだ、生まれた時代が違っていたら私もああだったかもしれないと連想を誘導してくれるものでした。
この素晴らしい作品を見過ごす事の無いように一人でも多くの人に見てもらいたいです。
良いもの見たー これは傑作です!
見終わったあとちょっと動けなかった…
どうしても戦争(ヒロシマ)の悲惨さからの反戦メッセージになりがちなこの手のストーリーではなく
庶民の日常にある戦争とその中での出来事を受け入れながら思いを残す その悲しみ、やるせ無い気持ち、様々な愛情、少しの楽しさと希望
原作も素晴らしいですがこの映画化は見事!
のんの声、演出、映像、全てがものすごいレベルで調和してます!
多くの人に見てもらいたい!
見る価値がある作品でした
1年以上前から心待ちにしていた作品でした。
まさか地元の映画館で公開するとは思いもしませんでした。嬉しいの一言です。
戦時中の話しと聞いていたので、火垂るの墓みたいに、最後は救われない話になるのでは?と思っていましたが、すずのキャラクター性で、暗くならずにすみました。
そのすずの声ですが、のんさんが演じると聞いていたので、期待外れと思っていましたが、以外にマッチしていて安心しました。
今年の夏の劇場アニメは、プラネタリアン、君の名は、聲の形と、良作が続いていますが、個人的には本作品が今年のベスト作品だと思います。上映館が少ないのが残念です。
泣くつもりが
きっと映画を見ながら泣くのかなと、上映前は思っていました。感傷的で叙情的な物語だと決めつけていたのかもしれません。
事前の予想は間違ってはいなかったけれど、上映中は泣くことはできませんでした。
劇中の時間の経過とともに、胸が痛く、切なくなり、辛くて怖くて震えるようにして映像に釘付けになっていたからです。
この世界の片隅に、というタイトル通り、今この現代の世界中のどこかで同じ物語が日々繰り返されているはずです。
私たちの日常の平坦な暮らしが、いかに幸せで貴重なのかを思い知らされます。
人間は失って初めて、無くしてしまったもののかけがえのなさを知る、小さな存在だと思い知りました。
今この文章を書いている私にでさえ、たぶん、幸せを身に沁みては分からない。
上映中は泣けませんでしたが、エンドロールが終わり、場内が明るくなり、立ち上がろとしたとき、不意に涙がこぼれ落ちてきました。
この映画に出会うことができ本当に幸せです。
ただ、上映館が少なすぎる。これだけが残念です。
リアルとほのぼの
アニメ映画なのだが、そのタッチはなにかに似ていると感じた。
そう、2013年のベスト映画のひとつだった「かぐや姫の物語」に近いのだ。輪郭がはっきりしない曖昧な水彩画のような絵。
かといって、背景の建物や家具やふとんなどはとてもリアルだ。
監督はその当時のモノには非常にこだわったと言っている。
でも、主人公のすずさんたちはぼよ〜んとした感じなのだ。
時代背景は戦前〜戦中〜戦後の数年間を描いていてとても切実。
でも、そこで暮らすひとたちはそんな状況に右往左往するのだが、
どこかほのぼのとしているのだ。
悪いひとはだれひとりいない。
主人公のすずさんをはじめ、家族、すずさんの夫や嫁ぎ先の両親、
いやみと思われた義理のおねえさんだって、そん状況のなかで
精一杯プラス思考で、やさしい関係をつくりだそうと努力している。
それを象徴していたシーンが食事にシーンだ。
お米や野菜などの配給がきわめて少なくなっている中、山の野草をとって、それをおかずにして食べる。そのつくりかたが実に楽しいのだ。
それをおいしいとは言わないまでも、その工夫に最大限敬意を評して
笑顔いっぱいにいただく家族たち。そんなしあわせなシーンがたくさんある。
そんな慎ましくも小さなしあわせがあった日常に、ピカッという光が降り注ぐ。広島から遠く離れた呉という漁港にも原爆のひかりが届いたのだ。それからしばらくしたあとの地震。あらゆるものが地鳴りをあげてひとびとを襲う。そして敗戦の玉音放送。そのとき、はじめてすずさんが怒りの嗚咽をあげる。
この日常と非日常。
その対比がこの映画に大きな説得力を与えていると感じた。
評価A
この映画は事件だなと直感しました。
凄まじい映画でした。
義理の姉の容赦ないことばの切れ味に、わたしは身をすくめてしまいます。
夫が玄関の錠をカチッと閉じてしまう、その音にビクッとしてしまいます。
つましい日常を丹念に描いていたのに、その瞬間、あれっあれっと胸がドキドキして
頬が紅潮して、日常の向こう側に連れていかれそうになってしまいます。
そこがすばらしい。そして、ある意味とても怖いのです。
日常と、その日常が崩壊した向こう側をシームレスに行き来する描写の
すばらしさ、怖さ、凄まじさがたくさん入った映画です。
ヒロインがほんわかした人なのでほわほわした印象が強く残りますが
ほわほわしてばかりの映画ではないのです。
ほわほわと、ほわほわの向こう側を描いた映画と言えます。
映画館を出るとき、すべての観客がメッタ打ちにされる映画です。
優れた芸術は、すべて有毒なのです。
その毒の威力のほどを、どうぞ実際にご覧になって確かめてください。
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