「皆さんと違う視点で・・・・」この世界の片隅に 3355さんの映画レビュー(感想・評価)
皆さんと違う視点で・・・・
皆さんが内容的なことは書かれているので、ちょっと違った視点で投稿します。
福岡県から県境を越えて佐賀市の映画館「SIEMA」にて視聴、上映館少なすぎです。シネコンに慣れたおっさんにはアウェー感ありありのディープな空間でした。去年からの宿題がやっと出来た感じ、カーナビで狭い路地を言われるままに運転しやっと到着。平日の月曜昼間なのに90席の半分くらいが埋まりました。年代は20代から50代が均等、男女比も半々という感じ。
すばらしい映画でした。昭和20年8月6日に向かって話が忠実に進められていて、日本人なら必ず知っている事実ですので飲み込まれます。あっという間の2時間(エンドロールも見ごたえあります)でした。
片淵監督は、夜行バスで広島・呉に通い資料を集める生活を6年間されたそうで、時間軸・風景は非常に正確です。山(灰ケ峰)の頂上にすえられている高射砲は戦艦大和と同じものが流用されており、大砲の音は実際に自衛隊に行って録音されたと。夜間の空襲は呉市街からの電源が途絶え、独自の発電機を用意していなかった(あのことを思い出しました)ため、サーチライトが使えず高射砲は役に立たなかったとのこと。木炭バスが登れなかった坂はここ。遊郭があった13丁目はここ。大和・武蔵が入港した日付はこの日。すずさんのうちは灰ケ峰の中腹で、市内に水を供給する給水所より高台にあって水汲みが必要であったこと。お義父さんが入院していた病院の階段は現在も残っていてこれです。闇市で残飯雑炊食べたのはここです。劇中の理髪店は当時の写真から起こし空襲前は実際に有ったこと。楠公飯・雑草の料理も実際に作り試食されています。楠公飯はそんなに不味くなかったとのこと、すべて事実です。
平成28年は、「君の名は。」、「シンゴジラ」と良作が多かったんですが、考えてみたらこれらは「虚」なんだなと、この作品は「実」を描いているんだと感じました。彗星が落ちたり、怪獣が襲ってきたりしなくて、戦争があって原爆は落とされたのですから・・・・。資料・文献・インタビューで作るのは大変だったろうとお察しします。
私の母は、終戦時10歳で、福岡県の大牟田市にいたのですが、戦争当時に、グラマンに機銃掃射され止っている貨車の下に隠れたとか、島原半島の向こう側(長崎)に大きな雲を見たとか、話を聞いてたので現実の厳しさをひしひし感じました。
出来れば、監督が希望されたカットなしの2時間30分の作品を、最新オーディオの映画館で、おっさんの泣き顔が見られなしように一番後ろの席で観てみたい。
★追記:原作者の「こうの史代」さんは、すずさんのお家周辺の聖地巡礼をご近所にご迷惑がかかるのでご自重くださいとのことです。