「自分たちも、このままぼーとしていたら…」この世界の片隅に showさんの映画レビュー(感想・評価)
自分たちも、このままぼーとしていたら…
広島に住む一人の女性の姿を通して、戦前から戦後の日本を描いた漫画原作のアニメ映画を、
渋谷ユーロスペースにて(ようやく!ようやく!!)鑑賞。
昨日の夜から、近辺のどこの劇場のweb予約を探しても「満席」となっていて、本作品の注目度の高さを伺えました。
一方、自分は原作漫画も知らず、2016年の東京国際映画祭での上映時も「こんなちんまい映画をよく上映するなあ」と思ったくらい、本作品にはノーマークでした。
が。。。
2017年初映画にして、早くも年間1位が決定してしまいました!!
「戦争」というものを、一人称目線で描くことをで、確かにそこに生きていた人々に想いを馳せることのできる作品となっていました。
その頃の環境がどんな状況下でも、そこに生きていた人々は無条件に受け入れることしかできず、心のワダカマリをひた隠して、ユーモアを忘れることなくやり過ごしていきます。
そんな人々の悲喜こもごもを通して、「生きること」というテーマを、力強く誠実に描いていきます。
それに加え、全てを鵜呑みにできない語り口の曖昧さや、謎のままの部分、余白部分を観客一人ひとりの想像・主観に委ねていて、
何度も観て真意を探りたい欲求に駆り立てる創りになっているのも嬉しい限りです。
時間の飛び越え方、極端な省略や後追い説明の数々は、大林監督作品「あの空の花」のクラクラとした映画体験を彷彿とさせ、大好物がたっぷり!
無駄なところが1シーン1カットもない、濃密で極上な126分でした。
一点、真面目な話をすると、
鑑賞中、「あの頃の人々」が戦争の全体像を知らぬまま翻弄される姿を観て、「もしかしたら、今の、そして、数年後の自分たちのことを描いているんじゃないか…」と思わずにはいられませんでした。
昨今のキナ臭い情勢を見ていると、自分たちの知らないところで、刻一刻と「その時」が迫っていてもおかしくありません。
自分たちも、このままぼーっとしていたら、いつの間にか青空に戦闘機が飛んでいる、なんて状況になっているかもしれません。
そうならないためにも、このような映画を観て「戦争は二度としない!」という、国民の総意が必要なのだと思います。
選挙の度に、「どうせ何も変わらない」とやり過ごさずに、国民一人ひとりが確かな心で、どうすべきかを判断する必要があるのだと思います。
「戦争」なんかになったら、「経済」とか「子育て」とか「福祉」とか言ってる場合じゃないですからね。
とりあえず、全国民一度は観るようにしましょう!!