「素晴らしい作品、何度見ても泣いてます!」この世界の片隅に 西住さんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい作品、何度見ても泣いてます!
これまでに4回観に行きました。
戦争により主人公「すず」さんの身の上に起こる後半の展開があまりに重く可哀想で、涙と鼻水が垂れっ放し、嗚咽をこらえるのに必死という、すさまじく心を揺さぶられる作品ですが、4回観てようやくこの作品のテーマが理解出来てきた気がしてます。
この物語は、いきなり知らない男性の元へ嫁ぐことになり、妻として主婦業を一生懸命にこなすことでしか嫁ぎ先での自分の居場所がなくなってしまったまだ子供の心を持つすずが、やがて訪れる過酷な運命の先に、人生で初めて自らの意思で(ここが大事)その嫁ぎ先こそが自分の居場所だという選択をし、戦後は孤児を育てながら母親として新たな人生を生きていく、そのように主人公のすずが成長することを戦中のエピソードとともに描いている物語。
簡潔にまとめると、そういうことだと思います。
自分の居場所を見つける物語、題名の通り「この世界の片隅に」自分の居場所を見つける物語、ということでしょうか。
戦争は、すずが生きた世界の日常を脅かす負の因子として描かれているのであって、すずの身の上に起きた不幸は何も戦争特有の事情ではない、現代でも交通事故によって同じことは起きる、と私は捉えています。
だからこの物語ではことさらに反戦を叫ぶようなことはせず、戦争自体はそれが市民生活に与えた影響を史実に忠実に描くことで、判断は観る者に委ねているというスタンスかもしれません。
ラストでは自分で自分の居場所を決めたすずさんが、戦災孤児を引き取り母親として、そして真の北条家の人間としての新たな人生を始めるハッピーエンドなんだ、と私は解釈しています。
そう理解しても、この作品で語られるすずさんの身の上に起きる不幸は、何度観ても私は涙なくしては観られませんが。
こちらこそ色々と考えるキッカケを頂き、感謝しています。それにしても、『シンゴジラ』(お前たちも好きにしろ、この国は誰が決めるの?)といい、『怒り』といい、観客側に、お前ならどうするんだ?と覚悟のほどを問うてくる作品が多いと思います。今年はもしかしたら何か大きな転換点なのかもしれませんね。
琥珀さん、素晴らしいコメントをありがとうございます。
そうですね、すずさんほどの心や体の傷を負わず、あらゆる物量だけは恵まれて現代に生きる自分は、果たしてどれほどの覚悟をもっているのか?
そう自問してみるとき、映画の中で、終戦(敗戦)の現実が受け入れられずに「そんなん覚悟の上じゃないんかね!最後の1人まで戦うんじゃなかったんかね!まだ左手も両足も残っとるのに!」とすずさんが言い放つ言葉が重く響きます。
おっしゃる通り、この映画は戦争映画とか反戦映画という範疇で語るよりは、人は生まれる時代を選べないけれど、たまたま生まれたその時代で何を選択し(そもそも選択肢がないような過酷な状況であっても)どう生きていくのか、自分で選んだ選択肢に覚悟と責任はあるのか、そのような文脈で受け止める作品だと思いました。
『はて、すずさんほどの覚悟が自分にあるのか?』という問いかけがいつまでも消えそうにありません。