「リアルとほのぼの」この世界の片隅に xtc4241さんの映画レビュー(感想・評価)
リアルとほのぼの
アニメ映画なのだが、そのタッチはなにかに似ていると感じた。
そう、2013年のベスト映画のひとつだった「かぐや姫の物語」に近いのだ。輪郭がはっきりしない曖昧な水彩画のような絵。
かといって、背景の建物や家具やふとんなどはとてもリアルだ。
監督はその当時のモノには非常にこだわったと言っている。
でも、主人公のすずさんたちはぼよ〜んとした感じなのだ。
時代背景は戦前〜戦中〜戦後の数年間を描いていてとても切実。
でも、そこで暮らすひとたちはそんな状況に右往左往するのだが、
どこかほのぼのとしているのだ。
悪いひとはだれひとりいない。
主人公のすずさんをはじめ、家族、すずさんの夫や嫁ぎ先の両親、
いやみと思われた義理のおねえさんだって、そん状況のなかで
精一杯プラス思考で、やさしい関係をつくりだそうと努力している。
それを象徴していたシーンが食事にシーンだ。
お米や野菜などの配給がきわめて少なくなっている中、山の野草をとって、それをおかずにして食べる。そのつくりかたが実に楽しいのだ。
それをおいしいとは言わないまでも、その工夫に最大限敬意を評して
笑顔いっぱいにいただく家族たち。そんなしあわせなシーンがたくさんある。
そんな慎ましくも小さなしあわせがあった日常に、ピカッという光が降り注ぐ。広島から遠く離れた呉という漁港にも原爆のひかりが届いたのだ。それからしばらくしたあとの地震。あらゆるものが地鳴りをあげてひとびとを襲う。そして敗戦の玉音放送。そのとき、はじめてすずさんが怒りの嗚咽をあげる。
この日常と非日常。
その対比がこの映画に大きな説得力を与えていると感じた。
評価A
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