「この映画を観ながら、ボクは今どこにいるのかを想像していた。」蜃気楼の舟 kthykさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画を観ながら、ボクは今どこにいるのかを想像していた。
寡黙、引きずり歩く足音、 静かな鎮魂歌を聴いているよう時間の流れ。
何かがあり、何かが起こり、何かを求め、どこかに行く、という映画ではない。
無名な風景の中、無名な老人と若者が、何することもなく、ただ揺蕩っている。
しかし、この映画は決して退屈ではない。
丁寧に選び取られた幾つかの風景や廃墟のような建物が舞台となり、
静かフィクションがあるがままの世界の上に浮かび上がってくる。
この映画はまたオペラなのかもしれない。
メロディーとしてカタチに成ることを拒む音の世界、
ここでもまた、何もなく、何も起こらず、何も求めず、
バイオリンの音だけがただただ揺蕩っている。
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