「虚構を楽しむ余裕」探検隊の栄光 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
虚構を楽しむ余裕
「探検隊の栄光」を観た。某番組を彷彿とさせるタイトルの胡散臭い響き、ジャケットの意図的な昭和感、濃すぎる俳優陣。これは全力で笑わせに来てますよね!
Google Mapと衛星写真とドローンで、地球上の全てを網羅できるご時世に、誰がど素人探検隊の成功を期待するのか。
この作品は、疑いようもなくノスタルジック・コメディである。これを手にした段階で、覚悟は決まっていたはずだ。見抜けなかったなんてあり得ない。
予想通り、テキトー全開で行き当たりばったりなロケを敢行し、素材にテキトーなナレーションを当て、限りなくユルく番組を作りつつ、どこか楽しそうなクルーの面々。
この映画の最大のポイントは「楽しそう」というところだ。あまりのテキトーさに不安を滲ませていた杉崎隊長でさえ、ロケが進むにつれだんだんと表情が明るくなっていくのである。
何故か?
それはテキトープロデューサー・伊坂も、テキトーディレクター・瀬川も、根っこのところで「こういうの面白れぇと思うんだよね!」と思ってやっているからなのだ。
そして一見下らないことを、時に本当に命懸けでやっているから、観ているこっちもクスクス笑いが止まらないのである。
仕上がった番組映像とロケ中の映像が交互に流れるので、その対比も本当に笑うしかない酷さだ。だが、そこが良い。
演じる俳優陣にとっては、「演じている人」を演じる二重構造になっていて、俳優としての技量が試される訳だが、杉崎を演じた藤原竜也はさすがの役者ぶりだ。
特にワニと闘うシーンがイイね!最高だね!
バカなことを本気で楽しんでやっているから、バカなことだとわかっていてもこれを楽しんでくれる人がいると信じているから、多分彼らは常識的な評価なんて、どうでも良いのである。
そのあたりがこの映画の何とも不思議な爽やかさの元だと思う。
エンディングの一幕は、それを雄弁に物語っている。