「機械仕掛けだろうがなんだろうが、オンナはやっぱり怖いのだ…😨」エクス・マキナ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
機械仕掛けだろうがなんだろうが、オンナはやっぱり怖いのだ…😨
女性型アンドロイド・エヴァに搭載されたAIの実証試験に参加した、プログラマのケイレブ。彼とエヴァとの交流を契機に巻き起こる疑惑と狂気を描いたSFスリラー。
監督/脚本は『ザ・ビーチ』(原作)、『わたしを離さないで』(脚本)のアレックス・ガーランド。
アンドロイドのエヴァを演じるのは『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』『アンナ・カレーニナ』の、後のオスカー女優アリシア・ヴィキャンデル。
実証試験に参加したプログラマ、ケイレブを演じるのは『ハリー・ポッターと死の秘宝』『アバウト・タイム 愛おしい時間について』のドーナル・グリーソン。
エヴァを開発した天才プログラマ、ネイサンを演じるのは『ドライヴ』『ボーン・レガシー』の、名優オスカー・アイザック。
第88回 アカデミー賞において、視覚効果賞を受賞!
第21回 放送映画批評家協会賞において、最優秀SF/ホラー映画賞を受賞!
作劇の世界には「デウス・エクス・マキナ」という、なにやらかっちょ良い言葉があるそうです。
これは「機械仕掛けの神」という意味で、まぁ要するに神様が登場してババーン!ハッピーエンドー!みたいな、ご都合主義的な物語の収束を批判的に捉えた言葉らしいです。
機械人形に命が宿る物語としては、やはりディズニー制作のアニメ映画『ピノキオ』(1940)が最もポピュラーなのではないでしょうか?
ブルー・フェアリーの魔法によってピノキオの命が救われ、さらには本物の人間の子供にまでなれちゃうという典型的なデウス・エクス・マキナな作品ですね。
さて、本作では『ピノキオ』で描かれた「正直者は救われる」的な理想論を真正面から突き崩し、デウス・エクス・マキナとは正反対の作劇によって、エヴァにとってのハッピーエンドへと到達します。
検索エンジン(モロにGoogle💦)をソフトウェアにし、世界中の人間の思考パターンを取り込んだ結果、自己の生命保持の為には他者を利用し殺害することも厭わないという、あまりにも人間らしい生命体へと進化したエヴァ。
人間以上に人間らしい彼女の振る舞いに、果たして生命とは?思考とは?意志とは?正義とは?と言った、答えのない問いかけに頭がいっぱいになること間違いなし。
この映画、最後の最後まで一体どこに向かっているのかが全くわからない。
終始不穏な空気が漂っており、一体この先何が起こるのか予想出来ないので、1秒たりとも気が抜けなかった。
誰が味方で誰が敵なのか?
誰が人間で誰がアンドロイドなのか?
誰の言葉が真実なのか?
SFとしても面白いが、ミステリーやスリラー映画としても抜群に面白い!
舞台は密閉された豪邸、そして主要な登場人物はたったの4人。非常にこじんまりとした密室劇でありながら、贅沢な広がりを感じさせる物語が展開される。
この設定で2時間の尺を、緊張感を途切れさせることなく描き切ったのだから、本当に本作の脚本は凄い👏
「人工皮膚ってあんなにペリペリと着脱可能なのかっ💦」とか、「迎えにきたヘリコプターの運転手さん、せめてゲストが男か女かぐらい知っとこうよ💦」とか、細かい点をツッコむことは出来るんだけど、全体的に完成度の高い、本当に面白い映画だった…。
SFスリラーものとしては最高傑作の部類に入るではないでしょうか!?
まぁ本作を観て一番強く思ったことは、「やっぱりオンナは怖いなぁ…((((;゚Д゚)))))))」ということなんだけど。
このご時世、あんまり男だ女だと区別するのも良くないのでしょうが、やっぱり「オトコはロマンチスト、オンナはリアリスト」という傾向はあると思うのです。
本作だって、アンドロイドが男型でテストを受ける人間が女だったら、全然違う物語になっていたことだろう。
現実主義的な考え方が出来る女性の強かさと恐ろしさ、ロマン主義的な考え方しか出来ない男性の弱さと愚かさが強烈に描かれており、並みのホラー映画では太刀打ち出来ないほどゾッとする作品でした😱
もっともっと有名になるべきなSFスリラーの決定版!
…にしても、なんで映画に出てくるIT長者って森の中に住みがちなんだろう?大体住まいもポストモダン的な四角くて温かみのない建物。
本物のIT長者は絶対こんな所に住んでないだろっ!
…いやまぁ別にいいんですけどね。
※2022年6月、GoogleのAI開発者ブレイク・レモインが、同社の開発した言語AI「LaMDA」に感情や知性が備わっていると主張。
彼はその後休職処分になったそうです。
真相はどうあれ、AIと人間の関係性が新時代に突入したのかも知れませんね…。