劇場公開日 2016年6月25日

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「もっと尾行の緊張感があっても」二重生活 puccinoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0もっと尾行の緊張感があっても

2016年7月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

尾行に夢中になるうちに
いつしか他人に感情移入して
もう他人事ではなくなってしまう。

好奇心と心地よい罪悪感。
人に話すことの出来ない
自分だけが知っている他人の秘密。

尾行の対象は誰でもいい訳がなく
やはり好みの異性でないとこんな大胆な行動ができるとは思えない。

しかし自分の生活を放置してまで
他人の生活を覗き見ることに何の意味があるのか。

尾行の経験が自分の人生に
何かしらの影響を与えてくれるのであろうか。
人生が豊かなものになるのだろうか。

誰もわからない。
だから実行するのか。

観て分かったことは
他人の生活を知ってしまう上で他人の隠し事まで知ってしまい
日々の生活では味わえない驚きや興奮、刺激を求めるようになり
他人の日常を追いかけることが
非日常となり抜け出せなくなるということ。

それに他人の生活を今の自分と比べた時、今の生活がいかに刺激のない淡々とした普通の日々であることに落胆し、
これほど自分は毎日を必死に生きていないことに気付くということ。

世間の人の方が自分より一見充実した日々を送っているかのように
見えるが実は装っているだけでみな一生懸命必死に
不器用に生きていることを自分の目で確かめてしまった。

そしてふと我に帰った時、自分の生活が置き去りになっていること、
自分の人生が止まってしまっているということに後悔し愕然とする。

尾行に費やした時間とエネルギーは無駄であるということ。
日常と非日常の二重生活が人生において意味の無いことである
ということ。何も残らない。ただそれだけ。

主人公のセリフ
「自分の深いところは空っぽで考えても考えても何も変わらない」

いくら頭で考えても分からない。だから実行に移してしまった。

他人の携帯を覗き見るのと同じで
見た後は後悔と疑念しか残らないと思う。
探偵か刑事でない限り尾行なんてやってはいけない。

主人公は尾行なんてしないほうがよいことに気付いたのだろうか。

puccino