「実体よりも、どう思われるかが大事な社会において、正しさとは何だろう...」ブリッジ・オブ・スパイ あきらさんの映画レビュー(感想・評価)
実体よりも、どう思われるかが大事な社会において、正しさとは何だろう...
実体よりも、どう思われるかが大事な社会において、正しさとは何だろうか。
ジムの行動は一貫しているのに、交換後の世間の評価は180度変わった。ハッピーエンドの雰囲気にありながら、実社会への問題定義とも感じられる。
交換が成功したのだから万々歳かと言えば、これもそうではなく、解放後の彼らの未来は保証されていない。ソ連側に迎えられる場面でのみ、アベルが緊張の表情を浮かべていたのは、その瞬間にやっと、今までの祖国への貢献が評価されるからであり、何十年もの人生の意味が決定されるからだ。
ジムは後部座席に乗せられたアベルを不安げに見送り、ジムに取っても全てハッピーとはいかなかった。
ただチャレンジし続けることが彼の強みだろう。彼の思う正しさを、合理的な選択だと他人に説得する力はすごいと思った。
また、彼は米国の憲法を守り、米国の人々の権利を尊重するという文化を守った。差し迫ったソ連の核の脅威より、もっと先の未来の祖国の在り方に重点を置き、外からの脅威より自国がどうあるべきかを考えたのである。世間はわかりやすい外からの差し迫った脅威に敏感になりやすいが、彼のような主張をする人に耳を傾ける必要性を感じた。
映画として、笑えて、考えさせられて、非常に満足した。
どの陣営にとって、どの捕虜が重要かが、考え方の基準によってころころ変わるというのが、この映画を端的に表していると思う。