「複雑すぎるのが難点」レジェンド・オブ・ヴィー 妖怪村と秘密の棺 R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0複雑すぎるのが難点

2024年2月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

世界が近代史に入った頃を舞台にした作品。
世界地図を作りたいと翻弄する主人公ジョナサン。いいところの娘と恋仲になるも彼女の父からは全く認められず、追い払われるように地図作りの旅へと出発する。
そうしてたどり着いた東欧の小さな村で事件に巻き込まれていく。
この作品の面白いところは、主人公が特質した頭の良さや機転が利くわけではないが、多少のドタバタ劇の中で事件の真相にちゃんとたどり着く点だ。
しかし、事件そのものが何かという点において、これが変化しているというのか、新しく出てきたの言うのか、「解決すべき問題は何?」という点が見失いがちになる所が難点だ。
まず領主の娘が沼で死ぬが、死ぬ直前によくわからないダイイングメッセージを残す。これがこの映画の根源となる。
そして領主は、祭司ではなく哲学者の男に娘の遺言通り3日間の祈祷を捧げる役目を担わせる。ここには領主の真の目的が隠されているのだが、村人は誰ひとりそんなことは思わないし見ていてもわからない。祈祷中に哲学者は「ヴィー」の力によって跡形もなく消されてしまい、村人は悪魔の力に怯えだす。
やがて祭司は悪魔である「ヴィー」がすべての原因だとし、厳格な宗教体制を整えていくが、葬式を済ませたい領主は1年間も祭司の許可が降りないままモヤモヤとした日々を過ごす。そんなときに登場したのが科学者と名乗る主人公だった。
さて、そのような状態の中、領主の権力が次第に祭司へと移り変わっていく。
映像は哲学者が体験したと思しき悪魔との対峙を映像として見せている。また、美しい娘たちの水浴びの様子、そして起きた死亡事件…
ジョナサンが村へ近づく途中に起きる悪魔の化身のような狼の大群…
酒によったジョナサンが見た幻想…
作品の中には登場していないが、酒には幻想を引き起こす何かが仕込まれているのだろう。
酒により幻想を見て、悪魔と調合される。それをしているのが祭司で、彼には2人の用心棒がいる。
領主がジョナサンに依頼したのは「この村の地図」作りだ。事件とはなんの関係もない。ジョナサンは村人からいくつかの情報を得るが、ジョナサンが興味を持ったのが哲学者の失踪だ。
つまり、映画の中で起きている解決すべき問題とジョナサンの行動が噛み合わないのだ。
それでいて問題は解決される。
最後にジョナサンが領主に言った「本当は娘がなぜ死んだのかを知りたかったんじゃないのか?」
ここに視聴者は意識を向けさせない脚本。悪魔を表現したような映像がいくつもあり、祭司らがいわくつきの教会を立ち入り禁止にしていることで、問題が悪魔に向いてしまう。
娘が死んだ事実さえ、本当に死んでいるのかさえも疑わしくなる。
ラストで実際に起きたのが殺人事件だったと思い出させるように出てくるのが、彼女の死の真相だ。しかしこれも想像できない仕掛けになっていて、映像美と複雑さはあるものの、結果としてカタルシスが出てこないところが残念だった。
描き方次第で最高に面白い映画になっただろうと思った。

R41