劇場公開日 2016年5月28日

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「麦茶で号泣。」ヒメアノ~ル ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5麦茶で号泣。

2016年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

興奮

何か酷いものを圧しつけられたような窒息感に喘ぎ、
ラストでそれが緩むと涙がボロボロ溢れてくる作品。
さすが吉田恵輔と思う二部構成のようなラブコメと
隣り合わせの悪夢が入れ替わる中盤で森田剛が息を
吹き返す。止まらない殺人がなぜ快楽になったのか
理由を突き詰めると、過去の凄惨ないじめが精神を
歪めたことは判明するのだが、かといって無差別に
人間を殺すこと自体に肯定はできない。ギリギリの
アンバランス態勢で作られた不協和音だらけの場面
で、何とか取り戻そうとする主人公の濱田岳が必死
になればなるほど悪夢が増す流れも秀逸すぎるのだ。
オタクな先輩のムロが見せる狂気と森田のサイコが
どこか共通しているようで異質だった展開も上手い。
いじめや差別による復讐に端を発する無差別襲撃が
後を絶たない現在でも、彼らの真意を探ろうという
試みはなかなか成功しない。理解できないものへの
拒絶は恐怖心から生まれている気がしてならないが、
裏切りという行為を本人に悪意がないところで発生
させる友情と恋愛の確執には、それが子供であった
としても深くトラウマとして刻まれることが分かる。
何よりも辛いのは、森田と岡田があのまま仲良しで
学校生活を終えていたら何かが変わっていたのかも
しれないと考えてしまう鑑賞後の自分がいることだ。

(まさか息子が殺人鬼になるなど親も想定できないし)

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ハチコ