「既視感と既聴感」ラ・ラ・ランド ハルさんの映画レビュー(感想・評価)
既視感と既聴感
既視感と既聴感によって評価は伸びないものの、それらはわかりやすい装置であってうまく散りばめながらこの舞台に相応しい作り手と観客、貧富、男女、伝統と迎合、そして夢と現実といったものの対比を見せて問いかけることに成功している。
多くの部分で過去の名作をオマージュしている本作は絵作りの上でイメージの共有が比較的楽だったはずで、それらをいかに美しくブラッシュアップしていくかに腐心したのだと想像する。ミュージカル映画として捉えるなら主演二人の歌唱とダンスは物足りなさを感じるだろう。そこでやりきっていないのはこの作家の音楽センスに起因しているのかもしれないし、単純に狙いや嗜好と合致しているからかもだ。
やはり若い作家ということで『セッション』同様に一本調子な印象を受けるのだけど、またしてもラストで面白いアイデアを繰り出してくる。
果たしてセブ=チャゼルなのかどうかは彼のこれからで示されそうだが、劇中でミアがポカンとする「START A FIRE」は結構いい曲だったのが逆に効果的で上手いなと思う。
そして特筆なのは【ライアン・ゴスリング】の演技プランだろう。良い意味で彼らしく無い素直な演技であの「ちょっと残念な」セブを作り上げていたと思う。主演二人は以前から好きな俳優だったからこの作品は嬉しいね。
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