劇場公開日 2017年2月24日

「ミュージカルを“皮肉”と“癒し”に。」ラ・ラ・ランド チンプソンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ミュージカルを“皮肉”と“癒し”に。

2017年2月24日
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鑑賞方法:映画館

ミュージカル映画を見ないし、ディズニーでよくあるミュージカルも苦手。突拍子な踊りに馬鹿馬鹿しさを感じていた自分。
この映画に関してもそうだった。少なくとも序盤の方は。

映画始まって早々、ほんとのほんとに早々にミュージカルが始まる。ここで自分の中でこの映画のリアリティラインが下がった・・・と思いきや、歌詞の内容が結構気になった。
なぜなら明るいメロディではあるもの、楽しげに皆歌ってはいるものの、歌詞はなにかを予見させるような語りが散りばめられていた。
実際それは映画本編のことを語っており、これから始まる、切なく、しかし見た目は甘い雰囲気を示していた。
突拍子なミュージカルかと思えば、いきなり現実のように振る舞いだす転調も飽きさせない作りだったと思うが、なにより全うにミュージカルを見せている。
どこかレトロチックで、悪く言えばクサい。けど映画のカット割りが基本的にユニークで見ていて苦しくは感じなかった。案外カットも早く、テンポも早め。

しかしそんな飽きさせないミュージカル部分が中盤でパタリと起きなくなる。比例して物語は夢と現実の狭間で揺れ動く二人の話になる。
目指す夢は好きなのか嫌いなのか、今やってることは夢の道すがらなのか、違うのか、諦めたのか、諦めていないのか。
その暗い雰囲気に、観ている側はあれだけ馬鹿馬鹿しくクサいミュージカルを序盤に見ていたにも関わらず、二人の行く末の不安から、序盤の甘ったるいミュージカルが欲しくなってくる。“癒し”としてのミュージカルが欲しくなってくる。
その厳しさは、ミュージカルがまるで二人の超理想を皮肉っていると感じられるほど。

そして終盤。観ている側は「現実」を思い知らされる。
「確かにそうだが、そうであってほしくなった」という気持ちが沸き上がるなかで、久し振りのミュージカルが流れてくる。
そのミュージカルはまさに、我々観ている側が願い、望んでいたものそのものだった。ミュージカルに“癒し”を見出だした瞬間だった。
しかしそれはどこをどう見たって現実から剥離した、演出された“ミュージカル”。現実はそうではない。
けれどこの厳しい現実も、二人が目指した夢のカタチなのだから否定は出来ない(多分若い人は同意できないだろう)。
観ている側も、二人を笑って見送るのが一番だろう。それでいいと思う。
二人はまだ、ミュージカルのような超理想の、夢の途中なのかもしれないから。

チンプソン