「what’s the sh*t is this?」サウスポー redirさんの映画レビュー(感想・評価)
what’s the sh*t is this?
泣いた。ど迫力のファイト。ライクアローリングストーンなビリーザキング。
ストーリー、お話としては、貧困のため親ではなく施設で育った白人のボクサー同じ境遇の妻、チャンピオンまで昇りつめ豪邸で私立の学校に愛娘を通わせ大事に育てるも挑発妬み興行側の罠などいろいろあり妻が殺されてしまう事件を気にここまで落ちるかと驚くほどにどん底に転がり落ちる人生子どもは自分達と同じ施設に収容され、、そこからの新しいトレーナーや今の貧困を生き同じような栄光を夢見る子どもとの出会い、再起、再生の物語、なので、迫真の演技、スラムのシーンはなんとなく本物っぽいザラッとした感じ、視線は目にダメージ受けるボクサーサイドからのシーンもあり、過去のファイトで義眼となった男の青いガラスの目玉で見ているようなざらりとした感じに加え、ジェイクギレンホールはじめみんな迫真真摯な演技で、とにかく物語的には随所に涙がでる。2023年失礼ながら配信で、とはいえ最初に見た作品、泣ける名作。
泣けるけど、感動作品じゃない、、
地元の子どもらにボクシングを教えるティムのジムで出会ったホッピー、名前の由来から死因までお母さんが絡んでいたがそのホッピーが死んでしまったときの、ティックが守りたいものを、守りたい子を守れなかった無念をビリーに語るシーン。What’ the shit is this?? このシーンがこの映画のハイライトだと思う。
ブロークバックマウンテンとナイトクローラーのジェイクギレンホールがまたもや、同じ人?同じジェイク??と魅せてくれる間違いなく強烈な主役を演じているのだが、私にとっては前半は妻のモーリーンが、後半はトレーナーのティックが、主人公。
施設で知り合いどん底から2人で這い上がり人生を計画し家族で幸せを掴もうとするモーリーン、夢や計画、既に邪悪な社会システムに絡めとらわれていることをわかっているからなおさら慎重に生きようとしてあり得ないくらいあっけやい不慮の死を迎える。
ティックは街に溢れる貧困の連鎖の中子どもたちを良い人生に導きたいと願うがホッピーにあんたはドリームクラッシャーだも言われたとビリーに告白する。繰り返しになるが本作品最大と見せ場なのだが(私にとっては)彼は自己矛盾の中で手探りで、やはりこの貧困の連鎖(抜け出せない貧困、成功を手に入れてもより大きな力がどん底に突き落としまた戻ってきてしまう貧困、世代が引き継ぐ貧困)のシステムと見えないサンドバッグ相手にパンチを繰り返すような焦燥を感じていた。
ビリーとモーリーン2人が育った施設はthe system と言われていた。
the system とTHE SYSTEM
決まり通りに対応する裁判所(でも日本よりは、よほど透明で公平で健全ではないか??)ボクサーを食い物にする興行主、ビリーの破滅の全ての原因となってしまったミゲルもまたコロンビア出身のボクサーの一人でこの大きなシステムに食われているだろう。
子どもらの収容施設もいろいろありそうだがここでは決まりに従いながらも善意のスタッフがいて、教育がなされ、大きなシステムと小さなシステムの巨大な隔たりの中の、落とし穴みたいな隙間に生きる人たち。
壮絶なファイトシーンという見せ場も、物語としての感動もあるが、この社会構造、隙間でもがく人たち、極端ではなく庶民である私も含めそこに生かされていることを実感させられ感銘を受けた。