緑はよみがえるのレビュー・感想・評価
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エルマンノ・オルミ監督による「人間の生」
「暖かいあの世よりも、激寒の戦場の方がいい」という兵士のセリフが印象的なエルマンノ・オムニ監督作品。
2016年に岩波ホールで日本公開された時から観たかった映画。
1917年のイタリア兵士たちが、第一次世界大戦で敵対するオーストリア軍と対峙する最前線。イタリア兵は家族から届く手紙を大切にしながら、雪と静けさと寒さの塹壕にいる。いつ死ぬか分からない状況が続くが……という風景を映した映像は美しい。そして、静けさを破るのは「砲弾の音」。
また、「これ本当にカラー映画?」と思ってしまうような暗さで描かれた映画だが、これがカラー映像場面とのコントラストで美しさ際立つ感あり。
「自らの従軍体験を、子供の頃の私に語った父に、この映画を捧げる」というエルマンノ・オムニ監督が描いた戦争映画は、観るまでは想像もつかない人間ドラマであった。「人間の生」を描きたかったようだ。
ある兵士が母へ書く手紙にしたためられた言葉も心に残る。
「戦争とは、休む事なく世界を歩き回る醜い獣である---羊飼い トニ・ルナルディ」
撮影監督は、エルマンノ・オルミ監督の息子さん=ファビオ・オルミ。
DVDに収録されている「本作の予告編」は「いかにも全編がカラー映画に見える明るさの画面で構成されていた」ので、「こうした明るい映像でも観たいな…」などと思ってしまった(笑)
<映倫No.46820>
何処で死ぬか選びたい
第一次世界大戦、イタリア軍は雪の中、塹壕にこもってオーストリア軍の猛攻に耐えていた。
作戦本部からの無茶な指示で、死者が増えていく。
命令を受ける兵卒も、命令を出す将校も混沌としてくる。
確実に死ぬような命令を受けた兵士の印象的なセリフ、「何処で死ぬか選びたい」。
赦し
インフルエンザが流行っている塹壕。
歌うイタリア兵に敵軍の歓声。
大雪の中で持ちこたえ、耐久戦。砲撃の中でありえない命令。離脱。攻撃と死。
第一次世界大戦の無残さはそのまま次の大戦では民間人も含めたものとなっていった。
赦しー 私たちにはそれしかない。
私の失態
んー、これほどの失態はありますでしょうか。エルマンノ・オルミ監督の作品を寝不足で鑑賞するという私の失態・・・。なんとか寝ないではいられたものの、はたして本当にしっかりと観たと言えるのか、これは・・・。これはいつか、もう一度見直さなければいけないですね、はい。
鮮烈に覚えているのは、塹壕の出口でのシーン。あの雪の白さとそこで起こった事態のあまりのあっけなさに、自分の世界がひっくり返るような気持ちでしたよ。
人は、よみがえる?
やはり、嫌ですね。死の恐怖が、心蝕む様を観るのは。戦争映画に、大作も、小作もありません。あるのは、望まぬ死と、苦しみ続ける生だけ。およそ生還できない命令を、するのも、されるのも、嫌な話ですよね。人が人を赦すのが先か、人が人を滅ぼすのが先か。創造主は、黙して傍観するのみ。「神は、サディストだ。自分じゃ気づいてないがな。」昔観た映画のセリフです。やがて来たる正義の為に、いつかこの国の、防人の皆さんが、同じ目に遇わないと、いいのですが。
戦場の静かな狂気
1917年、イタリアアルプスの戦場。雪の稜線上に浮かぶ白い満月。束の間の休戦、イタリア兵が恋人を歌うカンツォーネが月夜に響く。目と鼻の先にいる敵のオーストリア兵たちからの歓声、「もっと歌ってくれ、イタリアーノ!」
塹壕に降り注ぐ砲撃。前哨の兵士達には戦う意味もなく、欲望も情熱も奪われ、偶然に委ねられた死と死の予感だけが彼らを支配する。この場所でずたずたに破壊された人の心は、緑のようにどこかで蘇ることができるのだろうか。オルミ監督からの時代を超えた問いがここにある。
“母さん 一番難しいのは赦すことですが 人が人を赦せなければ 人間とは何なのか”
戦争と静寂
イタリア戦線最前線の塹壕内を舞台にした話。
凡そ戦時下とは思えない平穏さと静けさから始まる描写や、BGMや大袈裟な煽りもなく淡々とみせる描写に、少し引きつつも戦争の愚かさと虚しさを感じて響いた。
寝不足でみたら落ちる可能性が高いかもしれないけど、なんとも言いにくい良作。
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