「大学生におすすめ」奇蹟がくれた数式 井戸中蛙さんの映画レビュー(感想・評価)
大学生におすすめ
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一理系として、予想よりも証明こそ苦痛で成した時の喜びが大きいものはないと感じた。
特に、ラマヌジャンの見出す数式は文字通り奇蹟の代物であり、必ずしも予想が真ではなくも、本人からすれば天啓なのだと思う。
文学的に惜しい点として、フィックションにはなるかもしれぬが、有神論者と無心論者の価値観の相違を描いて欲しかった。
英国の皮肉も分かりやすぎて、残念であった。
ターゲット層が見えないが、イギリスらしさは少ない。
よって、なぜイギリスの文化に体が合わないかまでのコンテクストが少ない。
劇中では、スポットとしてラマヌジャンの苦悩がメインで、次いでハーディのフェローとしての視座からの視点にもなり、どちらの人物の描写も丁寧に書かれてそこは評価できる。
大学1年生の理系が課題で見る分には、数学の尊さと基礎の大切さを悟らせるには良さそうだ。
劇中でも描写されていはないが、学問は来るものを拒んではならないという、古代ギリシアのアカデミアの思想、プラトン主義にも通ずるものはやはり学者のコモンセンスに根差しているのだろう。
戦中の学者のリベラル思想が定かではないが、戦争というものがいかに愚行で忌むべきものかも含めて、学問がそれ自体で万国共通で尊いものなのだろう。
全体として、この監督も2人を通し、大衆映画から超越した普遍的な学者間特有の象徴を示したかったのかと思われる。
この監督の他の作品も観てみたい。
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