「夭逝の天才」奇蹟がくれた数式 odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
夭逝の天才
主人公S・ラマヌジャンは若くして多くの数論の定理を発見したインドの天才、彼の才能を評価した上司の勧めでケンブリッジ大の数学者に研究発表の支援の手紙を出すことになる。劇中ではガンマ関数の負値のふるまいと言っていますが、実際は「1+2+3+4+…=マイナス12分の1」という間違っているが奇妙な数式を記した手紙を見た英ケンブリッジ大の数学者ハーディー教授は数学の巨人オイラーが「ゼータ関数」という特殊な関数を使って導き出したのと同じ答えに、「天才」と直感し英国に呼び寄せることになる。さすがゼロを発明した国だけあってインダス文明のDNAは素晴らしい、私には殆どちんぷんかんぷんだったが数学監修に日系アメリカ人の数学者ケン・小野の名が、今もエモリー大学教授でラマヌジャンの研究を行っているらしい、ただ劇中の分割数の説明シーンで100の分割数は204,226通りと言っていますが50の分割数の誤りです、どこで間違ったのでしょう。
ハーディー教授とラマヌジャンは映画では親子ほどに見えますが実際は10歳差だったらしい、無神論者のハーディー教授と敬虔なヒンドゥー教徒の奇妙な師弟関係、ラマヌジャンのひらめきの源泉が女神の啓示であり人は神の定めた真理を発見するだけと言う、現代でも宇宙の仕組みを解く数式を「神の数式」と呼び相対性理論と量子力学の融合などが試みられているので含蓄のある表現ですね。
第一次大戦や人種偏見、教授たちの才能への妬みなどを乗り越え王立協会のフェローに認められるほどの業績を上げますが祖国で32歳で病死してしまう。嫁姑のよくある話まで実話かどうかは分かりませんが夭逝の天才の生きざまを描いた秀作でした。
余談ですが同じような話で真逆の師弟関係の実話があります、インドの天才チャンドラセカールとケンブリッジ大のアーサー・スタンレー・エディントン教授の醜聞、なんとエディントンは支援するふりをして策略を用いてチャンドラセカールのブラックホールの学説を潰してしまうのです、後にチャンドラセカールの説が正しかったことが認められノーベル賞を得ますが天文学研究が失った時間は計り知れません、権威とは怖いものです。