「演技の冴えるアイドルムービー」脳漿炸裂ガール うっちーさんの映画レビュー(感想・評価)
演技の冴えるアイドルムービー
映画「脳漿炸裂ガール」、角川新宿シネマへ観にいってまいりました。ズバリこの映画の見所は、今をときめくアイドル達が放つ輝きを、どれだけフィルム(古くてゴメン)に焼き付けられているかという一点にあります。
まず「脳漿炸裂ガール」はアイドルムービーにありがちな演技の「これくらいでいいや」感は、ほぼありません(あるとし
たらむしろ男性キャストですかね)。
ダブル主演の主人公、市位ハナを演じるのはアイドルグループ「私立恵比寿中学」の柏木ひなた(文中敬称略)、そしてもう一人の主役、稲沢はなを演じるのは女優でnon・noの専属モデルでもある竹富聖花。
この二人、アイドルムービーで求められるファンがこうあって欲しいという、お嬢様学園に紛れ込んだちょっとドジな普通の女子高生と、ミステリアスかつ聡明で優しいお嬢様という役どころを本人の持つ個性を生かして演じていました。
ストーリー運びも力業ながら良く練られていて(※以下ネタバレあり)最初に主演の二人がマカロンを通じて関係を深める場面、ここでマカロンを友情を示すガジェットとして提示して見せたのは終盤まで活きていて効果的でした。
他の登場人物もお弁当というアイテムを通してキャラクター説明をスピーディーに済ませているのも映画ならではの手法として好感が持てました。
このシーンだけで生徒役のメインキャスト、リッチ、ビッチ、パッチの3人の性格が明確に理解できました。
ただストーリーの軸となる「黄金卵の就職活動」ゲームについては設定のための設定という感じがしますがリアリティの無さが、良い意味でぶっ飛んでいて中途半端な突っ込みを許しません。
最終的に追い詰められたら主人公たちが、極限状態のなかで修羅場を繰り広げますが、その過程で冒頭15分で張られた伏線が気持ち良く回収されていきます。
演技については最初に触れましたが、うまい下手ではなくキャラクター作りという面では妥協が感じられない好演を各々が見せていました。
キャストたちが、脚本に出てくる部分以外の背景を演出側から丁寧なレクチャーを受けたか、理解するだけの充分な資料を与えられていることが容易に想像できます。
いま、この場面で各々がどのような感情でどのような演技をすべきかを把握しているので(また、脚本にもそこは描かれています)妨げられることなくそのキャラクターへの感情移入ができました。
主人公の柏木ひなた、竹富聖花も「ハナとはな」をぶれることなく最後まで見事に演じきり78分を楽しませてくれました。
その中でも特筆されるのはアイドルグループ「夢みるアドレセンス」に所属する志田友美の鬼気迫る演技です。モデルならではのスマートでありながら、しなやかな筋肉を感じさせる肉体が味田レイコという役に説得力を与えるだけでなく魂を吹き込んでいました(2丁拳銃を構える姿は惚れ惚れとする格好良さがありました)。
結論として、この「脳漿炸裂ガール」は、柏木ひなたの可愛らしさ、竹富聖花の凛とした気高さ、志田友美の鬼気迫る格好良さを引き出した素晴らしいアイドルムービーでした。