シチズンフォー スノーデンの暴露のレビュー・感想・評価
全32件中、1~20件目を表示
能動的サイバー防御法案
2013年、NSA局員のスノーデンにより暴露された国民への大規模監視の実態は当時の世界を震撼させた。それはジョージ・オーウエルが「1984年」で描いた超監視社会を連想させるものだった。
まさに現実がSFの世界に追いついた、技術の進歩により予算的にもこのような大規模監視が安価で行えるようになり、超監視社会が現実のものとなった瞬間だった。
9.11を契機に成立した愛国者法はテロとの戦いのために政府の権限を大きく広げるためのものだった。内容的に人権侵害の恐れがあるその法律はほとんど議論もなされずいわば9.11という災厄に乗じて作られた。いわゆるショックドクトリンというやつだ。
テロ防止の大義を掲げながら実際は無関係の国民すべてを監視対象としたものであり、スノーデンによるとこのシステムが導入されてから一度もテロ防止には役立たなかったという。むしろ産業スパイなど本来の目的とはかけ離れた運用をされていた。事実、このような盗聴やSNS上のデーターを収集してもテロ対策には役立たない。テロリストはそもそも携帯やネットを使わない。ビンラディンは1998年から携帯を使用してなかったという。彼の携帯を傍受した何者かが彼をピンポイント爆撃した経験から使用をやめたのだという。
当時のスノーデンが命を懸けたこのリークにより大規模監視は裁判所の事前承認が必要と法改正がなされ、オーウエルが描いたディストピアは回避されたかに思えた。
しかし権力者が一度手に入れた果実を早々に手放すとは思えない。手を変え品を変えてその果実を利用しようとするに違いない。
そしてこのリークから10年以上が経過した今まさに今国会で能動的サイバー防御法案が本年度成立を目指して審議されている。
サイバー攻撃に対応した本法律だが、裁判所の事前審査なしで自衛隊や警察が捜査のために民間のサーバーに侵入して事前攻撃を行えるというまさに先制攻撃ともとられかねない危うい法案だ。もちろんサイバー攻撃をあらかじめ予測して攻撃するわけだから普段からの監視が必要であり、その段階で憲法で保障される通信の秘密が侵害される恐れがあるとして野党からは批判されている。
サイバー攻撃を事前に防止するという大義名分はテロを防ぐために大規模監視をしていた当時のアメリカ政府と同じものだ。そしてもちろん安全保障上この法案はアメリカからの要請によるものであることも周知の事実だ。
当時のスノーデンリークは大規模監視に使用されていたXキースコアという検索システムが日本にも供与されていることも暴露している。アメリカと日本における国民監視の実態は同じと見ていて間違いないだろう。
あれから10年以上が過ぎて再びスノーデンのことを思い出さざるを得ないことが残念に思える。しかし彼が命を賭して我々に伝えようとしたメッセージは今も生き続けているはずだ。
権力者の横暴を告発する人間が自分で最初の最後になってはいけないという意味で彼は自身のハンドルネームを「四番目の市民」とした。彼の志を継ぐ五番目、六番目の市民が後に続かなくてはならない。
当時このスノーデンリークを描いた映画作品はドキュメンタリーの本作とオリバーストーンのドラマ作品が作られたけど、こちらの方がさすが本物だけに、またドキュメンタリー監督の手腕もお見事で全編にわたり緊張感が凄まじかった。
ある意味ショック・・・
怖すぎる
スノーデン事件の現場で何が起こっていたのか?
映画冒頭はかなり退屈な流れ。
途中でようやくスノーデンが登場し、それからが本番、という感じ。
元CIA職員でNSAの監視プログラムを暴いたスノーデン事件の顛末は、ネットで調べればすぐに出てくる。今世界中で問題になっているパナマ文章も、この事件の影響があったからこそ起こった出来事だったんじゃないか?と思えるほど、この事件は色んな人に様々な影響を与えたんだと思う。
で、顛末は良いとして、その現場でどんなことが起こっていたのか?を知るには最良の映画。
あの事件を起こすタイミングで、映画監督に撮影を頼んでいた、ということが何より驚き。これはスノーデン自身のアイデアだったんだろうか?たぶん氏と同じ立場になれば自分も同じことするかも・・とにかく事実をより多くの人に公表する以外に、自分を守る手段は無いだろうし。。。
氏は、この事件のため今もアメリカに戻れていない。それだけの覚悟の上での行動だったんだ、ということは映画を通してよく伝わってくる。で、伝えたかったのは、「プライバシー=自由の重要性」なんだと。
他国の状況はわからないが、日本では既にこの監視問題について忘れてしまっているようにも見える。今年2016年4月に、参議院で盗聴法改正法案が可決され、裁判所の許可無く自由に警察が盗聴して良いことになってしまった。
現与党は、過去の経済政策と、オバマ大統領の広島訪問でポイントを稼いで、そのまま7月の参議院選挙を乗り切る意向。その裏では、こういった法律の改悪を次々と行っているというのに。。。
そんな今だからこそ、この映画を観て、行き過ぎた監視社会の中で失われる物が何かを、考えるべきだと思う。
なんとなくそんな気がしていたこと
事実は映画より難なり
オリヴァー・ストーン監督による劇映画の方を先に見てしまったが、2013年に世界中を震撼させた元NSA(国家安全保障局)職員のエドワード・スノーデンの衝撃的内部告発に迫ったドキュメンタリー。
監視カメラやパソコン、SNSを通じて、アメリカ政府が、世界中を、個人を、監視している…。
ドキュメンタリーなので当然、告発者も証言も全て本物。
考えただけでも恐ろしい。
開かれた国家とは?
個人のプライバシーは?
エドワード・スノーデンは勇気ある告発者か、国家の裏切り者か…?
力作ドキュメンタリーだが、難しかった…。
政治的観点、スノーデンの知的な思想など、簡単に解るようなもんじゃない。
オリヴァー・ストーン作の方が解り易かったかな…。
自由のために。人間のために。
アメリカ政府が世界中の通信を監視可能であり、実際にそれをしているという内部告発による、全世界を震撼させた特大スクープ。
その内部告発は、始まりから終わりまでをカメラで記録されていた。
この映画の監督によって。
内部告発の内容は、ニュースを見ればわかる。
この映画は歴史上最大規模の内部告発をする人物とはどのような人間で、どのように行動するのかを記録しており、それだけでとても興味深い。
また彼を追い詰める政府の動きが、巨大権力の恐ろしさや問題を描きつつ、観客を映画に引き込む強い緊張感を与えている。
とはいえ大切なのは、なぜ監視社会は遠ざけるべきものなのかという点をこの映画がきちんと描いていることだ。
それは観客に、自由とは何か、ひいては人間とは何かを考えさせるキッカケになるだろう。
だからこそ、この内部告発の意義は大きかったといえるのだ。
この映画は、ひとりの男が人間にとって大切なものを守ること、そしてその困難さを描く、現代に起きた偉大な戦いの記録なのだ。
星は情報としての評価
テロを防ぐため全てのアメリカの国民の行動がある意味平等に監視される...
テロを防ぐため全てのアメリカの国民の行動がある意味平等に監視されるということが、プライバシーの侵害にあたるということに対する暴露だが、かなり理解が難しいし、私はテロを防ぐためなら国が国民を監視してもいいと思ってしまう。
アメリカっぽい事件だなと改めて思いました。
真実を知って欲しい
福井メトロさんありがとう!
●いま起きている産業革命。
考えさせられる一本だ。作品そのものはリアルタイムの凄さを除けば、ちょっと退屈だったけど。
ネット社会の光と影。その先にあるアメリカの企み。
いま起きている産業革命は、これまでとは全く違う。これまでは動力革命だったけど、今回のそれは脳活動や人間の行動パターンのアウトプット。パーマンのコピー人形も夢じゃない。そしてそのスピードが凄まじい。われわれ先進国の庶民が携帯電話を持つようになったのもつかの間、PCすら腕時計になった。わずか20年ほどの間に。オレは友人の電話番号も家までの道順も覚えていない。すでに記憶の一部は外付けHDにあるから。
本作、というよりこの事件は、こうした便利さの裏にある闇について考える機会をくれた。プライバシー(=趣味趣向から行動パターン)が丸裸ってことは、極論だがある日突然、何かの容疑者にでっち上げられる可能性すらあるわけだ。実は、すさまじく恐ろしいことだ。
マイナンバー制、通信傍受法改正、秘密保護法など、日本でもきな臭い動きがある。しかしアメリカはその先を行く。情報戦争ではGoogleを筆頭に、食物戦争ではモンサントたちが、静かに世界を牛耳ろうとしている。一部のセレブたちによって。
一方、Googleなんてちょっとした国家を超える市場価値だし、国土はないけど、ネット上の通貨はもてる。そう考えると、企業と国家もボーダレス。さらにそれを企業でも国家でもなく、思想でネガティブに振り切ったのがISLだ。良し悪しは別として。
企業と国家。国家と個人。その形も大きく変わる可能性すらある。こっそり進める者、暴露する者。核兵器がそうであるように、誰がそれを手にするかによって世界は変わる。
他所の国の他人事じゃない話。
作品そのものや、ネタの事件よりも、そこに描かれた「事実」こそが重要な一本。
観た方の多くは「他人事」だと捉えるかもしれないが…
コレ、程度の差こそあれどこの国でも秘密裡にでも公然と行われているよ、ここ日本でも。
それが国主導か、企業自主かは白黒つかないとしても。
通信にしても、ネット通販にしても、果ては小包の履歴にしても、その他税金や年金やらの支払いにしても、エトセトラ×∞。
「全てはどこかしらで記録されている」
それが今の時代ということを、観ていて改めて思い知らされた。
例えば何気なく「ポイントカードはお持ちですか?」と聞かれて出しているカードにも。
例えばだが過去にトラブルを起こした顧客の情報が記録されているんだよ…
恐ろしいことに、例え本人に悪気はなくても全国の加盟店でリーダーを通せばそれが「注意情報」だとしても開示されてしまう事にも成り得る訳で。
便利さの裏にある今の「情報化時代」の怖さを、改めて思い知らされた作品。
全32件中、1~20件目を表示