「いつもながら邦題とキャッチのお節介感が酷い。」黄金のアデーレ 名画の帰還 さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
いつもながら邦題とキャッチのお節介感が酷い。
でた。邦題でネタバレ。"名画の帰還"て。実話なのでネタバレもないと思いますが、なんとも無骨なタイトルですね。
実は本作も、ミケランジェロ・プロジェクトと共通する部分があります。第二次世界大戦時にナチスに奪われたグスタフ・クリムトの「黄金のアデーレ」ですが、戦後はオーストリアに返還されました。しかしそもそもこの名画は、アデーレの家族が所有していたもの。アデーレの姪が、絵画返還をオーストリア政府に求める裁判を起こす。というストーリー。
原題の「Woman in Gold」は彫金師だったクリムト絶頂期に、エジプト芸術や、琳派、つまり大和絵の影響を受け、金で装飾した豪華な絵を描いてた。その頃の名画「黄金のアデーレ」に由来すると思います。個人的には人気が落ちて来て、金を全く使わなくなった頃の作品の方が好きです(豪華絢爛な絵は、クリムトの見た目や自分の生まれに対するコンプレックスが表れてる気がして気の毒になる)
確かアデーレをモデルにした絵は複数あったと思いますが、本作では(恐らくオーストリアが所有権を認めたのが一枚だったからか)「黄金のアデーレ」だけが登場します。
とは言え、本作はクリムトの伝記物ではありません。
アデーレの姪であるマリア(ヘレン・ミレン)の家族の思い出と、裁判の行方を追ったヒューマンドラマとなっています。
私の父の絵の師匠がよく「絵は告白だよ。上手く描かなくていい」と言っていましたが、
本作はまさに名画「黄金のアデーレ」が告白する、アデーレとクリムトが生きた時代と、マリアの家族の物語です。
マリアを助ける若い弁護士ランディにライアン・レイノルズ。弁護士に見えないちゃらっとした彼が、成長していく姿に好感。派手な演出はありません。家族の思い出が詰まった絵画の喪失、つまりユダヤ人迫害でマリアが失った物の大きさを表してる点。うん、後からじわっと来る。
って、キャッチで既にテーマを言ってる!もう、こういうのが一番むかつくんですよ!観客って、配給会社が思うほど馬鹿ではないので。テーマくらい、ちゃんとくみ取れます!
ですが良作。強めにオススメします。